ただ、愛おしい人と会いたかった。願ったのはただ、それだけだった……

 なんとシニカルで悲しいお話だろう……。

 主人公のミゲルは、アイリスという恋人と幸せに暮らすはずだった。
 魔法剣士でもあった彼は「邪神」が姿を現した時に戦場へと送られることになるが、特に役に立つこともなく終わってしまった。
 
 でも、アイリスとの幸せな日々は戻ってきた。そんな日々に満足を覚えていたが、アイリスは病によって命を落としてしまう。
 そんな彼の前にシルクスと名乗る「教団の人間」が現れ、アイリスを救う方法があると持ち掛けるが……。

 愛する人との日々を取り戻すためなら、多少の犠牲は厭わない。「卵」をシルクスから渡された時になんらかの条件を告げられたが、アイリスと会いたいと願うミゲルにとってはその卵だけが唯一の希望となる。

 その果てで、彼は最後に何を見たか。

 ファンタジーな世界だからこその、このダークな展開。強烈な読後感が迫って来る、鮮烈な印象を持った作品でした。