わからないという人間の根源的な恐怖がここにある

 今回のお題フェスは『未知』がお題なんですが、そのお題をシュレディンガーの猫と重ね合わせて、うまく作品として昇華しているように感じました。

 シュレディンガーの猫をちゃんと説明しようとすると大変なのでよく知らない人は自分で調べてほしいのですが、めっちゃはしょって言うと、量子が波と粒子、どちらなのかは観測するまで確定しないということを、シュレディンガーという人が箱の中にいる猫で例えたものですね。まあミクロの世界の話をマクロの世界で考えるとわけがわからないことになるということです。

 さて、本題のこの物語についてなんですが、ある交番に電話がかかってくるところから始まります。
 ミチヒトという男が部屋から出てこないとその男の母親が電話で言ってくるのですが、電話の途中でそのミチヒトからも電話がかかってきます。しかしミチヒトから話を聞いていると、違和感を覚えるような話が出てくる。

 いったい、真相はなんなのか。実際に見ないとそれは確かめられないのでしょう。しかし、知るのが怖い……。だが、わけがわからないこの状態も怖い。
 わからない、ということへの人間の根源的な不安や恐怖が表現された、傑作でした。

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