喪失と、わずかながらの希望

探索する人間たちに「スキル」といった特殊能力をもたらしてきた「ダンジョン」。
そのダンジョンはどこかの英雄のお陰で消滅してしまった。

不安をもたらしてきたダンジョンの消滅が、必ずしも幸せになるとは限らない。
戦争に行った元軍人が、一般社会に適応できずに悩みを抱える、といったようなことが起きてしまう。

主人公である元A級の国定弥生もその一人。
いまやコンビニバイトで、仕事帰りにワンカップ飲むのが楽しみな女の子。
一般社会で冷遇される身で、どこか肩身を狭く生きている。

そんな弥生が出会うのは一人の少女。
その少女との出会いが弥生に与えた影響とは……。

本作は、記憶にまつわる物語である。
忘却は死にも等しい。
それでも、弥生の気持ちは前を向く。
そのあり方は、読むものにわずかながらの希望を与えることだろう。

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