シュールな関係がはらむ癒やし
- ★★★ Excellent!!!
「おじさん」と「私」は現実の「生」から浮いている。どこかシュールで観念的な生き方をしている。
「私」は、人の気持ちが理解できない。フリーターとして生活。セックスで繋がれた人間関係のなかで生きて、妊娠するとお金だけもらって満足することにしていた。
一方、「おじさん」は、自分は宇宙人だといいながら、自分の内的世界で生きている。外見は、どこにでもいるようなありふれた中高年。薄い頭部には脂が目立ち、食いぎたないところがある。
「私」は「おじさん」と交流する。真夜中の缶蹴り。おじさんのマイペースながらやさしいセックス。二人でたべるいくら丼。その中で、「私」はやがて自分の抱えていたものの正体に気付かされる。そして、「私」は「おじさん」の取っていた生存戦略の中に癒やしを見出すのだった。
言葉のいらない関係性。そのゆるやかなつながりが持つ可能性。それは絶望ではなく希望にあふれている。