時代に浮かび上がるまなざしが仄めく二人称ホラー

時は幕末から明治初期。新撰組副長・山南敬助とその息子・要助にまつわる物語。
二人称が持ち味の地に足がつかない語り口、否――魂の声が時のまなざしとなってまとう独特な作風に引き込まれる。
父親に殺された息子の魂――彷徨い抜いて宿る先は誰の身体なのか。
身体の中から聞こえてくる誰かの声も。
ささやく地蔵に宿る似せる顔も。
哀しみと業の思念とが静かな輪廻となって、再び巡りゆく。
地蔵菩薩の赤い風車のように。
いつまでも回る余韻が美しい時代ホラー小説。

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