親子の愛憎、要助の魂のホラー要素もあり
人にも剣にも純粋な沖田総司との擬似的な兄弟愛も書かれていて素晴らしいです。
山南敬助の人生が、わかりやすく書かれていて、副長としての立場から、浪士との戦闘での負傷(近藤さんのため、赤心沖光を所持)細い刀が折れた事件を経て
小野派一刀流や北辰一刀流を修めた使い手なのに剣が振るえなくなり、新撰組内での微妙な位置、不要な扱いへと徐々に変化してしまうのが切なく。
また、要助魂グイ、延命などなど。輪廻転生のようなのも不思議な感じでした。
老婆もゾクゾクしました。
新撰組好きにおすすめな作品です。
あの個人的に、八月十八日の政変の時の
普段温厚な山南さんがマイ甲冑なくて怒りまくり、松原忠司になだめられた件がツボです。
壬生界隈での親切者は山南、松原とか
やっぱり、新撰組みんな個性的でいいですね。
慣れ親しんだ新選組の面々。名前を目にした瞬間、彼らが息を吹き返したかのように動き出し、物語は一気に現実味を帯びていく。歴史好きにとって新選組は、どこか家族のように身近な存在だと改めて感じさせられる。
物語の幕開けは、静かでいて深く胸を打つ悲しい事件。その出来事に宿る想いが物語全体を支配し、やがて大きな事件へと発展していく構成が見事だ。中心に据えられたキーワード「細い刀」が、不穏さと緊張感を際立たせている。
史実の重みと創作の魅力が絶妙に交差する一作。歴史が好きな方はもちろん、そうでない方にもぜひ手に取っていただきたい。読後には、きっと新選組がより身近に感じられるはずだ。
本作、短いながらもしっかり拝読しました。 読了後、真っ赤な風車がクルクルと回り続ける残像が、いつまでも残っているようでした。
こちらの作品は、「細い剣は折れる」というモチーフが物語全体を貫いていました。 幼い宗次郎が丸太を振り回しながら叫んだ「細い刀では駄目なんです、兄上!」という言葉。 これが後に山南敬助の運命を決定づける場面で鮮やかに回収されたときは、1万字に満たない作品でありながら、深みのある構成だと思いました。
また、何気ない童の言葉があれほど重い予言として機能していたとは……。 序盤に配置された一言が、物語の核心を射抜いていたことに気づいた時、作者の設計力に深く感動しました。
もう一点、私の心を掴んで離さなかったのは、語り手の「認識のズレ」が生む悲劇性です。 若い妻が「老いた母」にしか見えないという描写が大変素晴らしかったです。 「旦那様ッ!!」と泣き伏す女性の悲痛さと、それを「母上」と呼ぶ語り手の断絶。 この残酷な齟齬が、怪談でありながら純文学の深みを持つ所以だと感じます。
そして、沖田総司が山南の手を握りながら「魂呼び」を叫ぶあの場面に、言葉にならない兄弟愛を受け取りました。
輪廻の輪が回り続けるこの物語は、大変読み応えのある素晴らしい作品でした。
本作「とんがらし地蔵」は、新選組副長・山南敬助という史実上の人物を軸に、
父と子、生と死、継承と代替、愛と罪を重ねて描いた幻想歴史譚です。
人格の交替を、単なる「魂の入れ替わり」ではなく、
役割が引き継がれていく過程として描いている点が印象的でした。
父を否定しきれない要助の歪んだ感情と、
二人称を基調とした不安定な語りが重なり合い、
読者に説明されない違和感を静かに積み重ねていきます。
「完」と記されながら、どこか終わっていないように感じられる読後感も強く、
不確かさは周到に組み立てられ、
確かな手応えとして読み手の側に残してゆきます。
歴史小説の枠を越えた読書体験を求める人にすすめたい一編です。