過酷な運命に翻弄されつつも、必死にもがく人々の生き様
- ★★★ Excellent!!!
「歴史」や「運命」というような言葉を感じさせられる作品でした。
とある教授と助手が発掘した古墳時代前期頃の遺跡。そこには奇妙な形状の土器などがあるのがわかる。
そこで何があったのかと教授たちは想いを馳せ……。
過去の時代、姫巫女は「穴穿の皇子」と呼ばれる男と無理矢理に結婚させられることになる。穴穿は容姿の面でもあまり良いとは言えず、周りからは不憫がられることに。
一方で穴穿の皇子とされた男は、ただ土を掘るのが得意なのを買われ「皇子」の地位に祭り上げられただけの人物だった。
危険な「祭事」を行わさせられることになるので、本物の皇子にそれをやらせるわけにはいかず、男はその代わりをやらされることに。
容姿はたしかに良くないが、それでもまっすぐな瞳を持った穴穿。彼の人となりと触れていくうちに姫は彼を憎からず思うようになっていく。
でも、そんな二人の平穏を壊そうとするような動きも起こり……。
どことなく、手塚治虫の「火の鳥」の黎明編やヤマト編を思わせる雰囲気もあり、その系の作品が好きな人には間違いなく刺さる作品でした。
ただ必死に生きる。時代や自然や神、そういった世界のあらゆるものに翻弄されつつも、強くもがき続ける人々。そんな「生き様」をありありと見せつけられ、自然と彼らの「その後」がどうなるのかと想いを馳せるようになっていく。
壮大な一個の叙事詩のような広がりがあり、読後に大きな満足感が得られます。