身近だけど遥か遠くにある「死」。死神とともに生きる少年の運命の物語。

 めちゃくちゃ感動しました。小さい頃からフィクションで涙腺が緩むという経験はめったにないのですが、本作の結末にはうるっと来てしまいました。

 本作の主人公は普通の少年・修司。

 いや、普通というのは正確ではないですね。彼には昔から「人が死ぬ直前、その人の顔に黒いモヤがかかって見える」という特殊能力が備わっています。それに伴い、彼は通常は見えないはずの死神までも視認できてしまいます。

 彼は幼い頃、少年の死神・陸斗に出会いました。この出会いが修司の運命を変えていきます――。

 死神には掟のようなものが存在します。それは、事前に一時設定した『ルール』に則り、その『ルール』を満たした者が死ぬ運命を辿る、というものです。

 この物語設定が、本作をミステリたらしめる非常に重要な部分を成しています。

 修司と陸斗の出会いから時が経ち、陸斗はとある小さな村を担当することとなります。その村の住民の死を司る重要な役目。

 そんななか、陸斗は村に修司を呼び寄せます。


 第一の事件での『ルール』は「村人各々にロウソクを一本ずつ割り当て、そのロウソクが使えなくなったタイミングで死をもたらす」というものでした。

 しかし密室内でロウソクが折れる不可解な事件が発生。その後も謎は増えていき、犯人は誰で目的は何なのか、混迷を極めていきます。


 第二の事件での『ルール』は「村内にある壁画の木の葉を村人各々に割り当て、葉っぱが消えたら死をもたらす」というもの。

 しかし今度も「誰にも近づけないはずなのに葉っぱの絵が削り取られている」という事態に。不可能状況が新たに加わります。


 第三の事件での『ルール』は「村の近くの森の蝶々を種類別で村人各々に割り当て、森の中からその種が絶滅するかあるいは人の手で殺されたら死をもたらす」というものに。陸斗は今回の条件は「蝶を人の手で殺した場合」にのみ発動すると明言します。

 しかし、明らかに蝶が衰弱死したとしか思えない状況で『ルール』が発動されます。どこが「蝶殺し」と捉えられたのか。またまた不可解な現象が生じることとなります。


 どの事件も謎が魅力的で、読み手を飽きさせません。やはりミステリにおける推進力は「謎」が大部分を占めますから、本作はその点「読ませる力」が非常に強力です。

 それでいて「解決」も目を見張るものがあります。地に足のついた論理でスルスルと事件が紐解かれていく過程は、もう手練れの職人技のようでした。

 不可能状況が三つも発生していますが、どれもトリックに無理がありません。さらに伏線や手掛かりも丁寧に配置されており、極めてフェアな作りとなっています。

 ちなみに僕は一つも解けませんでした。言われてみれば「うわーそういうことか!」となりますが、自力で解くのはかなりムズいです。


 さらにさらに、本作はミステリとしてだけでなく小説としても凝った作りになっています。解決編が披露されたあと、終盤の怒濤の展開には思わず鳥肌が立ってしまいました。

 人間にとっての「死」とは何なのか。死神にとっての「死」とは何なのか。修司と陸斗の関係性および心境の変化に要注目!


 「謎」で読み手のワクワクを途切れさせず、「解決」で読み手を手玉に取り、「結末」で読み手を感動の渦に巻き込み、「読後」も読み手に深い余韻を残す。

 総じて末恐ろしいほどに完成度の高い作品でした。

 読むなら今だ!!!!!

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