異世界の決断と、現代の少女――その距離が物語になる

本作で描かれているのは、異世界でなされた“ある決断”と、それとはまったく切り離された形で始まる、現代日本の少女の人生です。

物語は、重い異世界の章から始まります。
そこで語られるのは、勝利でも希望でもなく、「守るために選ばれた、取り返しのつかない決断」。

その直後、舞台は一変し、現代日本の、穏やかでやさしい日常へと移ります。
ドジで素直な少女。
大切にしてくれる家族。
何気ない毎日。

あまりにも空気が違うため、最初は「これは本当に同じ物語なのか?」と戸惑います。
けれど、その戸惑いこそが、この作品の入口なのです。

可愛いもふもふの存在や、微笑ましい日常描写があるからこそ、後に訪れるであろう出来事の重さがより際立つ構成も見事。

「なぜこの少女は、現代で“テロリスト”と呼ばれる存在になるのか」その答えはまだ明かされませんが、読み進めるほどに――それは決して、単純な悪ではないと確信させられます。

優しさがいっぱいの物語が、どこへ向かってしまうのか。
その行き先を見届けたくなる、強い引力を持った作品です。

その他のおすすめレビュー

晴久さんの他のおすすめレビュー761