たった一度きりのタイムリープに全てを駆ける

転生は簡単に行えません。冒頭部からのスタートは間違いなく炎と血に塗れたバッドエンド。しかし、それを女王の特権で使える「時駆」により最悪の結末を塗り替える為に壱与は再び時を駆ける。

とにかく短い地の文に込められた情景と感情の流れが怒涛のように押し寄せてくるので次に進むページを止められない。

空気、風、血の匂い、汗、炎、水、気。
そして五感を最大限まで揺さぶってくる映像で浮かぶような筆力。
戦場シーンはアクションバトルばりの臨場感。
壱与とナシリのそれぞれの視点で繰り広げられる一人称視点にドキドキ。
本当に台詞のないふっとしたシーンひとつに胸がきゅんとなったり、ハラハラしたり忙しい。
第一部ラストのシーンは鳥肌ものです。ここまで拝読させて頂き言葉が出ませんでした。これをタダで読めるのか…おいしい。

しかし物語は非常に複雑。
それなのに、読者のために迷子にならないよう視点の調整と、シーンの順番が迷子にならないようにちりばめられている。ほっとするシーン、戦闘シーン、ヒリヒリするシーン、恋愛パート。ここでこれを持ってくるか…!!と唸ります。
この世界観で難しい設定を矛盾なく綴っていくプロの手法、たった一度きりの時駆で壱与がどのような結末を迎えるのか、序盤からもうわくわくが止まりません。

時駆とは。
ただナシリに会いたい、ではなく、ナシリが生きているだけではだめだ。
彼女はもう一度邪馬台国を血のない世界にするために、仲間たちと今日も駆ける。
戦う主人公壱与、成長していく彼女を全力で応援したい。
これからも非常に楽しみな作品です。

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