吸血鬼モノが大好きな方にぴったりの作品です。まぁ吸血鬼モノといってもバトルからホラーからコメディーとたくさんあるわけですが、この作品はとにかくロマンティック。耽美的であり、華麗であり、ロマンスがたっぷりと詰まっています。
肝心の吸血鬼エドガー・フィルモアですが、なんと天才外科医。その腕前はもちろん、長時間の手術でも疲れることなく淡々と精密作業を繰り返すことが可能。疲れた時にはちょっぴり血を分けてもらうこともできて、なんとも天職な感じです。
そのお相手は日本人ピアニストのルネ。とにかく自信がなく、コンクールの予選に残っているだけでも奇跡だと、これ以上は無理です、と古風というかなんとも奥ゆかしい子です。
物語はこの二人を軸に、惹かれ合う二人の様子が描かれていきます。実は人間になりたいエドガー、吸血鬼の存在を当たり前のように受け止めるルネ。二人の邂逅と旅を経ながら、ルネは国際的なピアノコンクールに挑んでゆきます。
最初は自信のなかったルネですが、エドガーとともにヨーロッパをめぐる旅を通し、楽曲への理解を深め、それを表現してゆく様子が丁寧に書かれていきます。このパートがまた圧巻です。クラシックの知識がなくとも、行間から音楽が流れ、二人の人生とリンクしていくように感じられます。
またエドガーにも吸血鬼ならではの苦悩があります。高貴な一族であるが故の責任と、自由への渇望、人間への憧憬、そんなものがルネとの旅の中で癒され、より惹かれ合うようになるのです。
美しい光景の数々、流れる音楽の美しく激しい旋律、エドガーとルネの二人の恋の行方といい、読み応えたっぷりの素晴らしい作品でした。吸血鬼モノの好きな方はもちろん、クラシック音楽が好きな方、美しい恋のストーリーが好きな方、そんな方々を満足させてくれる作品だと思います!
人間になりたい吸血鬼と、若手天才ピアニストの流音とのお話です。
こちらの主人公エドガー先生は何と神の手を持つ天才「外科医」
どうしても同じ医療現場にいた人間としてみると、先生のぶっとび発想と、ちょいちょいしれっとやらかす行為に笑ってしまう部分が多々。
世界観はとにかく美しいのに、たぶん笑わせる方向性じゃないのにエドガー先生がさらりととんでもないことを言うのでじわじわと笑いが・・・
手術中に首を噛まれて血を吸われた流音はとんでもなく天然さん。
まだ第一章終わりまでしか拝読できておりませんが、ピアノの旋律と異種族同士の名前もない人間度をあげるこの感情がどう結末まで結びついていくのか非常に楽しみです。
描写が美しくて、海外の作品やクラシック好きの方は所々で出てくる名前にテンションあがります!
うまく伝えられませんが、たぶんウケ狙いでない部分もエドガーがこう話すからじわっとくるものがあり、読んでいて本当に面白い。好みは別れると思いますが、私は好きです。
ソナタさんの作品は、その背後にたくさんの色や光や知識が隠れている。
紡がれる言葉は絹のスカーフのように、軽やかで、するすると、上質な手触りを伝えてくれる。
人間になりたい吸血鬼の外科医エドガーと、彼の病院に偶然搬送された日本人の娘、流音(ルネ)
若手登竜門の国際ピアノコンクールを控えている流音だが、頼りなく、自信がなさそうだ。
一次審査の課題曲について、エドガーは流音にアドバイスをする。彼女が見たいと願う湖水地方に車で連れていく。
吸血鬼のエドガーがいわく、吸血鬼界隈で人気の曲は、ヴェルディ『怒りの日』なのだそうだ。
笑った。
二人の交わす会話は、気取りのないきれいな言葉で、端々に知性とユーモアがのぞく。
最低限の描写しかしないのに、物語の裏にはリバーストーンの首飾りや、窓際のヒヤシンス、水仙の咲き乱れる庭園を渡る海風などが見えてくる。
……湖のそば
木々の下
風になびいて踊ります……
ワーズワースの美しい詩にふさわしい美しいふたり。
しかし彼らは、人間と吸血鬼なのだ。
アメリカにながく暮らし、美術に造詣が深く、世界中を旅しているソナタさんならではの海外小説のような洒脱さと、野原に落ちるひかりのような明るさがわたしは好きで、次々と生み出される物語を、毎回、夢のように追いかけている。
読むといつも、「いつまでもこの世界に浸っていたい」と想うのだ。