滅びから巻き戻った少女王は未来を選び直す。

(1部15話までのレビューです)

 炎と血の匂いが文章から立ち上がってきて、世界が終わる音まで聞こえる。

 そして、そこから始まるのが、やり直しの物語、しかもタイムリープ系で多い何度もやり直しながら進む、ではない「一度きり」という刃が喉元に当たったまま、選び直していく緊張感を突きつけられます。
 
 そして、古代風の王国を舞台にした、恋と戦をテーマにしたタイムリープものながら、戦部分の重みづけがともすれば、ダークファンタジー寄りのリアリティで迫ってきます。

 剣を取れば誰かが死ぬ。じゃあ、どう守る。どう許す。どう贖う――その葛藤が、少女王と少年暗殺者の関係に、甘さだけでは終わらない重みを与えています。

 特にそれらを彩るのは、情景の密度としての火・風・水・血の表現が具体的で、場面転換のたびに空気が変わるのが分かり、さらに心が動く描写としても、普通に考えれば大げさに感じるような激しい表現も戦という極限で繊細さを際立たせている。

 描写の力で「場」を作り、関係性の変化で「心」を動かし、さらにテーマで「奥行き」まで出してくる――かなり手数の多い構成なのに、読者が迷子にならないのも、良い意味でライブ感とは違う、しっかりとした物語の作り込みから来ていることを感じます。

 冒頭よりテーマと内容がしっかり噛み合った作り込みは相変わらず、お見事の一言!
 少女王と少年暗殺者の「距離」がどう変わっていくのか、この先も楽しみにしています!

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