舞踏会での婚約破棄のシーンから物語が始まります。
煌びやかな王都、そこで民のことを顧みることなどなく贅の限りを尽くす王や貴族たち。主人公は、そんな彼らにいっそ冷徹なまでの眼差しを注ぎます。
そう、彼女は数字に信を置くストイックな現実主義者でした。
正しく見抜く目を持つ彼女を暗殺する計画があり――。
父と娘の絆、辺境騎士団長との出会い、崩壊寸前の砦の再建録、とたくさんの見どころが丁寧で確かな筆致で描かれます。
不正や誤りだらけの帳簿や様々渦巻く謀略に、淡々とそして耽々と挑んでいく主人公の姿には鬼気迫るものさえ感じられます。
たった一人で、地位も家も、過去の自分さえ捨ててなお、決して諦めない彼女の生き様が印象的な作品です。
王子は主人公エリアーナ・クライフェルトよりも聖女を選び、婚約を破棄。
エリアーナは自ら身を隠し、辺境の地へ。
……と、ここまでは悪役令嬢もののお決まりの筋ですが、主人公はただの令嬢ではありません。
財務長官令嬢エリアーナは数字マニアだったのです。
父親から託された『帝国破産の帳簿』を手に、その遺志を胸に、エリアーナは新たな人生を生きていきます。
冷徹に計算された数字を基に、帝国を変えていく算段を進めていくエリアーナ。
しかし、身を寄せた砦で出会った人々との交流の中で、その無機質だった数字に少しずつ彩りが加わっていくように見えます。
エリアーナの最終目標は何か。
巡り合った人々とのこれからの関係はどうなるのか。
一章が終わり、二章に入りましたが、まだまだ先の展開が楽しみな作品です。
帝国にとって耳障りで聞きたくもない数字を把握している貴族令嬢とその父は、馬車の事故に遭う。
彼女は父の帳簿を胸に、自分の生き延びるための可能性をはかり、辺境の砦に向かう。
──死人文官シュアラとして。
計算を武器に、削られるはずだった命をマスにとどめて価値を置き直し、盤面を変えてゆく物語。
彼女の計算と帳簿による価値観が、理解されなかったり反発されたり、計算を人の心に届くように置き換えることを知ったり、新たに自分の価値観になかった人の心を計算に付け加えることを学んだり。
そういうちょっと違う価値観で語られる、悔しさや不安や後悔の表現が面白いです。
死に直面しても、次の行動に移れるのは数字としての冷徹な価値観を持っているからでもあるし、同時に人との摩擦も起きる。
メリットとデメリットがちゃんと出ているのが良いですね。
かといって、冷たい子というわけではなくて人の命や感情にちゃんと価値をおいてくれ安易な切り捨てを選ばず、前向きに活かすことを検討してくれます。
本人いわく「無駄にする余裕がない」そうですが。
個人的には、生真面目なところが目立って、多分噂があるくらいだから美人なのについでのように語られているのがちょっと面白かったです。
国に見捨てられたような北の砦に、一人の女性文官がいた。軍師とも呼ばれるこの女性が、本作の主人公である。主人公は数字と計算を武器に、比喩的にも実際的にも「死にかけた砦」を再興していく。砦を任されていたのは一匹狼の雰囲気を持つ男性。主人公とこの男性は初めこそ反発し合うが、徐々に信頼関係を構築していく。
まずは砦の胃袋である食糧庫。ここではあるはずの数字が欠けていた。そして砦が管轄する村ではそれぞれの能力が存分に生かされていなかった。さらに砦の兵を見てみれば武器が欠け、兵力になるはずの兵が機能していなかった。これらをいつも沈着冷静な目で確かめ、数字に置き換え、計算し、次々に指示を出していく。
ところが、砦が正確な数字のもとに機能し初め、村に好循環がもたらされ出すと、切り捨てられていた砦に目をつける輩も出て来る。
果たして主人公は砦を生かし、人を生かし、敵を退けることができるのか?
そして主人公の計算を狂わせる危機が砦に迫る!
主人公が隠してきた本当の姿とは?
今までの「溺愛もの」や「女性主人公」とは一味も二味も違う女性像がここにある。数字と計算という一見無機的なものが、主人公のキャラクターと合っていて、そこが面白い。弾き出される数字と、砦や村の個性豊かな面々とが絡み合って、物語が進んでいく。まるで本当の帳簿を見ながら盤面を動かす「ゲーム」をしているような感覚です。
是非、是非、御一読ください!
悪役令嬢もので、追放されて、ヒーローに溺愛されて逆襲するのね。
と思う方は待って欲しい。
死んだことにされた主人公エリアーナは数字(財務)により、見捨てられた砦から逆襲をしていくのですが、
数字の説得力や切り分け能力の高さは作者様の知性を感じます。
描写も砂埃の気配や錆びた鉄のにおいがしてくるようなリアリティがあり、
テンプレだと思って流し見すると勿体無いです。
溺愛というのも、じりじりと距離が縮んでいきそうな気配で、何故溺愛されるのかも説得力を以って読者に示されます。
エリアーナことシュアラがどのようにして帝国の問題に迫るのか、目が離せません。
物語は、舞踏会での婚約破棄から始まります。
いわゆる悪役令嬢の婚約破棄のシーンから始まるわけですが、この悪役令嬢が『死人文官シュアラ』として名前を変え、帝国に切り捨てられようとしている辺境ヴァルム砦から帝国を立て直していくお話です。
辺境ヴァルム砦は「冬までの死亡率は、およそ七十パーセント」の砦。
シュアラは色々な問題を少しずつ解決しながら、この数字を下げていきます。
全体的に落ち着きのある丁寧な描写で読書の満足感を味わえる作品です。皆さま、読んでくださいませ。絶対に「読んでよかったな」と満足できるはずです。
個人的には、第29~30話の「矢を撃てない狙撃手」のお話がお気に入りです!
華やかな舞踏会の喧騒の裏で
父から渡されるのは〝空欄の死亡届〟
明日までに王都を発つよう告げられた瞬間
少女の世界は音を失い
帳簿から名が消える――
その冷たさが、逆に息をさせる導入でした。
そして
「泣く暇があれば、数字を見ろ」という言葉が
彼女の背骨になる。
感情を殺すのではなく
守るべきものを見失わないための
算術なのだと滲みます。
辿り着くのは
崩れかけた石壁のヴァルム砦――
〝帝国の帳簿で死んだ女〟が
再び生きる場所。
ここを〝盤面のゼロ地点〟として捉え
『第0ゲーム:試験国家ヴァルム』を
自ら書き込む感覚が鮮烈で
物語が一気に〝国家〟へ接続されます。
敗軍の将カイ・フォン・ヴォルフと
死人文官シュアラ
切り捨てられた二つの駒が
同じ盤上に置かれる瞬間の緊張が美しい──
「この砦を、三ヶ月だけ私に貸してください」――
交渉は甘さではなく、覚悟の硬さで進む。
さらに〝七割が死ぬ〟という試算を
淡々と差し出す場面は
数字が刃にも祈りにもなることを
突きつけてきます。
戦記でも政略でもなく
帳簿という沈黙の武器で世界を組み替える再建譚。
紙とインク、石と冷気の手触りが濃く
続きが読みたいと思わせる熱が、確かに残ります!
「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」、「世の中には3つの嘘がある。ひとつは嘘、次に大嘘。そして統計である。」などなど、数字にまつわる名言は多いですね。
本作の主人公エリアーナは王太子に婚約破棄されるだけで無く、財務長官を務める父共々「事故による焼死」で葬り去られようとする。
だが、それを予測していた彼女は自らの死を偽装し、辺境の砦に赴き、そこから再起を図るのでした。まずやるべきは、見捨てられ、このままでは「失血死」する砦の「死」を留めること。そのために砦の物資や資金の流れを追っていくエリアーナだった。
最初に挙げたように、人は数字で嘘を吐く。その嘘をいかに見抜き、どう修正していくか。物語は始まったばかりですが、数字で戦う異色の追放令嬢の活躍から目が離せません。