兵士となった少年は、母を守るために戦った。砦が陥落し、死を待つ少年の顔を、敵兵の一人が覗き込む。「ずいぶんと背が伸びたな」少年の命を拾った敵兵は、かつて一度だけ家を訪れた男だった。今まで知らされずにいた真実が、波のように少年を呑み込もうとしていた――戦場で紡がれる家族の物語。少年は再び走り出す。行き先は「故郷」ではないけれど。そしてこの物語は、色彩の美しさも魅力のひとつだ。「金色の鳥がたくさん飛んでいるような夕焼け空」から始まる旅が、最後にどんな色で終わるのか。ぜひ見届けてほしい。
戦火の只中から始まる物語は、少年の視点を通して、痛みと混乱、そして過去へと静かに遡っていきます。激しい状況描写の中に、子守唄や貝殻といった柔らかな象徴が差し込まれ、私の感情をゆっくりと解きほぐしてくれました。敵味方という単純な線引きでは語れない関係性と、それでも少年自身が選び取る未来。その一歩が描かれる終盤は、切なさと同時に、かすかな希望を感じさせる余韻を残します。
奇縁、宿命に翻弄されて、悲しみとともに流されて、誰も望まなかった運命によって戦場に立たされたその少年。入り乱れた運命が解きほぐされても、もはやそれは遠いもので。解き放たれた少年は、それゆえにこそ信じる「自分」へと羽ばたいてゆく。その足取りが、力づよいものであることを願って。
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