んで終わる
【なかたかなげーむ】
【死亡者】
【中田カナ】
【中田華菜】
【中田佳那】
…
…
…
…
【中田歌七】
【中田佳奈】
【中田加暖】
加える。
暖かさ。
かなん。
その名前とは反対に。
『かな』ちゃんが冷たくなる。
私は抱きしめ続けた。
『かな』ちゃんを殺した手で。
【生存者】
【田中香那】
なかたかな達の死体を映した八つの画面。
囲まれた真ん中のモニター、たった二行。
それを。何時間も何時間も。ただ。
ぴっ。
首。元に。
何か電流のようなものが、流れた気がした。
なかたかなげーむ。
あれからもう、ずいぶんと経った。
けれど。げーむは、終わっていない。
『中田』。
と表札のある。
高級住宅街の一軒家。
扉の前。
「あら。まあ。えーと。……田中、香那?」
「久しぶりね。田中香耶さん。いえ。今はまだ、中田香耶さん?」
「そんな、さん付けしなくても。昔みたいに。かやちゃん。で良いじゃない? かなちゃん」
「そうね。香耶。かやちゃん」
「とりあえず、入ったら?」
部屋の中は、綺麗だった。
大きな木のテーブルに。
私は座る。
「ごめんなさい。突然来るものだから。散らかってて」
香耶は、柔らかい嫌味を投げる。
「そう? 招待されたのだけれど?」
「なにを言っているの?」
「なかたかなのかい」
香耶は何も言わず。私の正面に座った。
「秋涼の候、ますますご清祥のこと」
「なに? しゅうりょう? ごせいしょう?」
「ごせいしょう。ご清祥。祥は祝福の、示す編。それが正しいの。さんずいの。太平洋の洋じゃなくて」
「なんなの?」
「言葉遊び。シ、ネの代わりに。死ねの代わりに。そういう意味」
「くだらない」
「好きでしょ。そういうの。あなたと彼の結婚式の招待状。ご清洋のこと。死ねの代わり。そう書いて私に送ったでしょ」
「知らないわ。送った? そもそもあなた、結婚式来ていたかしら?」
「行ってない。彼との子を妊娠していたから、ねえ」
「なによ?」
「『かな』ちゃんは、私の子だったんでしょ」
香耶は無言。
「かやちゃん。自分の名前嫌で。香那だったら良いなって。私の彼。自分の彼だったら良いなって。いつも。いつも。私のものを」
「っ。うるさいっ」
「私は。勝てない」
「そうよ。あんたは、ずっと、負けて負けて、」
「あれだけ大規模なゲームをやっても、世界は何も変わらない。きっと。大きな組織で。個人ではどうしようもない」
「そう。その通りよ。私が開いた。なかたかなのかいを」
「それは嘘。あなたは、所詮下っ端。会を開いたのは幹事。あなたは、その手足。どうこうしても。組織は何も困らない」
「価値のないのはお前だっ。殺す殺す殺す。あの男と同じ。あの婆と同じ。あのガキと同じ」
香耶を殺した。
私も多分。殺される
けれど、それまで。
『かな』ちゃん。
げーむは、
おかあさ
んで終わる。
なかたかなげーむ さわみずのあん @sawamizunoann
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