「普通の青春」を願う転生少年と、舞台袖から嗤う誰かの物語

前前世は現代日本のOL、前世は孤独な魔法研究者。二度報われなかった人生を経て、三度目の人生で「最高位貴族の少年」として生まれたキオが、それでも欲しいのは「力」ではなく「普通の青春」というスタートがまず印象的です。

貴族社会の中で浮いてしまうほど特別な彼が、灰色の髪の少女やクラスメイトたちと少しずつ距離を縮め、自分の居場所を探していく第一章は、派手さよりも心の動きと日常の積み重ねを大切にした青春群像劇としてじっくり味わえました。

そして間話01の「???視点」で、一転して暗い劇場から青春を「茶番」「喜劇」と嗤う男のモノローグが挟まることで、この物語がただの学園ほのぼのでは終わらないことが一気に伝わってきます。眩しい日常が、これから訪れるであろう「悲劇」への助走なのかもしれない――その予感がたまらなく不穏で、続きが気になりました。

丁寧な心情描写の青春ファンタジーが好きな方、そして「匂わせ系の黒幕」がいる物語に惹かれる方におすすめしたい一作です。

このレビューの作品

夜空色の青春

その他のおすすめレビュー

黒鍵さんの他のおすすめレビュー12