少年と聖女の出会いから始まる、じっくり味わう王道ハイファンタジー
- ★★★ Excellent!!!
救国の英雄と謳われる『煌炎の魔女』マルゼスに育てられながらも、術法的不能を抱えた少年フラム。彼が破門を言い渡され、森をさまようところから物語は静かに始まります。そこへ現れるのが、「自分そっくりの魔物」を探している神殿従士の少女フェレシーラ。二人の出会いが、世界の謎と「封じの炎」へとつながる最初の一歩になっていきます。
第一章の時点では大事件が次々起こるタイプではなく、会話と日常の所作、森や塔の空気感を描き込むことで、舞台とキャラクターをじっくり立ち上げていく構成です。そのぶん、フラムの不器用さやコンプレックス、フェレシーラのまっすぐさが少しずつ滲み出てきて、「この二人の旅路をもっと見届けたい」という気持ちが自然と積み上がっていきます。
転生・チート・ざまぁ・ハーレムといった要素はあえて排し、「少年少女の成長」と「練り込まれた世界観」で勝負しているのも本作の大きな魅力。アトマや術士/魔術士/神術士といった用語も、説明に偏りすぎず、物語の中で少しずつ輪郭を増していくので、本格派のファンタジーが好きな方ほど刺さると思います。
焚き火のそばでゆっくりページをめくるような読書体験がしたい方に、第一章から自信を持っておすすめできる作品です。