嘗て、グラスだった鋭利な欠片たちの終焉

作者の持ち味としている洒脱さや軽妙さ、
更には『仕込み』は、全くといって良い程
見当たらない。
 と或る 一家 が、巨大な台風が直撃
する河原でパーベキューをしていて
死亡した、という 事実 から始まる。

これは終へのカウントダウン。
救いなど、勿論ない。

 真にヒトの心に巣食う 闇 だけに
只々焦点を当てて描き切った物語である。


一度、壊れた『家族』をやり直そうと
その原因たる父親からの提案で、主人公の
仁美は再び父母と弟のもとへと舞い戻る。
そこには只、打算のみが存在していて
弟も又同様に、親からの庇護や援助を
目的として、偽りの 家族 を。
歪な関係を新たに築き上げて行く。


一度でも牙を剥いたモノは、もう二度と
信用してはならない。

冷淡な様でいて、それは 真理 だ。

壊れてしまった家族は元には戻らない。
生き直す事しか出来はしないというのに。

この作品の凄まじさは読んでいて胸苦しく
なる程に鬼気迫る。精神的にどれほどの
負荷をかけて書いたものか、それが
まざまざと読む者に伝播する。

これは怖い。

作者渾身のサイコホラーの傑作。

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