真相は塩尻家のみぞ知る?
- ★★★ Excellent!!!
台風の日に河川敷でBBQをしていた一家の死亡を伝えるニュース。
それを目に、あるいは耳にしたとき、「危機感のないバカが死んだ」とちらとでも思わない自信はあるだろうか。
「新手の一家心中かもしれない」と推理するだろうか。
よくある家庭不和。改心した父によって再結集させられた家族のやり直し。
グレードアップした生活に首輪をつけられ、飼い殺されながら以前の出来事の再演を迫られる主人公・仁美の語りは、どこまで信頼できるものだろう?
冒頭の事件の首謀者と偽りの楽園生活の真実に迫っていく過程ももちろんスリリングだが、
黒幕をはじめとする全キャラクターそれぞれが異なるタイプの醜さをこれでもかと見せつけてくれるので、悪意の発露の仕方カタログのような見方も楽しめる。
しかし、悪人だからといって悲劇に見舞われて良いということは決してないし、彼らが成敗されて胸がすくということもない。
彼らはどうしようもない部分を抱えながらも、必死に生きていた。
必死でなくたって、善い人ではなくたって、生まれてきたのだから誰にだって生きる権利はあるのだが、社会に適応するうちに、誰もがそれを忘れてしまう。
前述の通り人間の醜さに焦点を当てつつ、ただ「嫌だなぁ」というだけでは終わらせず、「人の存在価値とはなんだろう?」と考えさせられる一作。
是非ラストのひと言に、一家の選び取った慈悲のない運命に、打ちのめされていただきたい。