概要
鬼に嫁いだ女房、月夜に愛と自由を賭す。
応仁の乱前夜、雅やかな花の御所の奥に、ひとりの女房がいた。名は藤子。公家・山科教言の娘として生まれ、和歌を詠み、朝廷の雑事を記す穏やかな日々を送っていたはずだった。だが彼女には、決して消えない傷があった。母・葵は、かつて将軍・足利義満の愛妾として差し出され、その無体な仕打ちに心を病み、藤子がまだ七歳の時、桜の木の下で自ら命を絶ったのだ。「鬼の手に落ちるな」――母が遺したその言葉は、藤子の胸に呪いのように刻まれていた。
ある夜、藤子は将軍・足利義教の使者、武士・直継によって花の御所から連れ去られる。父は娘を守るどころか、「家のためだ」と目を伏せるだけだった。義教の邸で藤子を待っていたのは、母を壊した鬼と同じ血を引く男の、冷酷な支配だった。夜ごと呼びつけられては尊厳を踏みにじられ、藤子の心
ある夜、藤子は将軍・足利義教の使者、武士・直継によって花の御所から連れ去られる。父は娘を守るどころか、「家のためだ」と目を伏せるだけだった。義教の邸で藤子を待っていたのは、母を壊した鬼と同じ血を引く男の、冷酷な支配だった。夜ごと呼びつけられては尊厳を踏みにじられ、藤子の心
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