掌編小説という形式で、サクッとさまざまな味わいを楽しむことができる。一つの物語をじっくり読むのも良いが、多くの掌編に触れ、次々と新しい刺激を得る。もしかしたら、タイパやコスパが重視される現代においては、これもひとつの正解なのかもしれない。これだけ多彩な物語を生み出す作者には、脱帽するばかりだ。
短い掌編に封印された 不可解 と不条理。それらは理解して初めて怪奇と成るがこの掌編集は、それらを決めてはいない。普通の話かどうかは読み手に委ねられている。毎日、ラジオから自分の姓名が呼びかけられる事も、子供の頃に母が濡羽色のセーターを編んでいた事も。扉を開ける、その行為自体に永遠に囚われるそんな怖気に至るか至らないかの絶妙なラインを征く 掌編の中には無限の薄闇が広がっている。
もっと見る