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概要
その一冊だけ、買わないと言われた。
三十一冊を紙袋に詰めて、燈は電車で二駅の古本屋へ行った。
翻訳者になるつもりで集めた本だった。辞書まで、全部売るつもりだった。
店主の源三は、本を開かない。表と裏を返して、角を親指で撫でて、置く。それだけで値をつける。
三十冊を買って、一冊だけ、買わなかった。
「これは買わねえ」
「……どうしてですか」
「知らん」
夕方番の学生・悠斗は、それを見ている。見て、何も言わない。
シャッター商店街のいちばん奥、古書店〈四季堂〉。
手放しに来る人と、手放させない店の話。
翻訳者になるつもりで集めた本だった。辞書まで、全部売るつもりだった。
店主の源三は、本を開かない。表と裏を返して、角を親指で撫でて、置く。それだけで値をつける。
三十冊を買って、一冊だけ、買わなかった。
「これは買わねえ」
「……どうしてですか」
「知らん」
夕方番の学生・悠斗は、それを見ている。見て、何も言わない。
シャッター商店街のいちばん奥、古書店〈四季堂〉。
手放しに来る人と、手放させない店の話。
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