漫才と共に生きる

 シタミデミタシの二人は大阪に来ていた。

 ブラウンビーツとの約束通り、彼らの単独ライブのゲストとしてやって来たのだ。

「さとるー、たこ焼き美味しかったね」

「流石は本場のたこ焼きだな」

「通天閣も行ったし、全部は回りきれなかったけど楽しかったな」

「ほんとだね。すごく楽しかった」

 くがっちが悟と控室で談笑していた。

 そうしていると、ブラウンビーツの二人が控室にやって来た。

「よう来てくれはったなあ。どや? 大阪は堪能出来た?」

「はい、とても」

 タカヒロが話を振ってきたので、悟が答えた。

「それは良かった。関西も漫才頑張っとるんがぎょうさんおるで。また見に来て欲しいもんや」

「また大阪来ます。すごく楽しいんで」

 ケンジの言葉にくがっちが反応している。

 くがっちはあくまで大阪を楽しみたいように感じられたが、気のせいだろう。


 リハーサルも終え、いよいよ本番が近づいてきていた。

「そろそろ俺らはステージの方へ行くで。そっちも準備が出来たら舞台袖で待っとってくれんか?」

「お二人のネタ、拝見させていただきます」

「おう、見せたるで」

 タカヒロの言葉に、悟が返事をする。

 タカヒロが気合十分なところをシタミデミタシの二人に見せた。

 単独ライブをするための気迫は十分だといったところだ。

 そんなブラウンビーツの単独ライブのゲストとして呼ばれたのだから、シタミデミタシの二人としても、それにふさわしいネタをやっておきたいところだ。

 シタミデミタシの二人が舞台袖に着くと、ブラウンビーツの二人がオープニングをそこそこに切り上げて早速ネタをし始めた。

 相変わらず彼らの余裕たっぷりの漫才に貫録を感じずにはいられない。

 シタミデミタシの二人も観客であるかのように、ブラウンビーツのネタを一生懸命見ていた。


「さとる、いよいよだね」

「ああ、俺たちも持ってきたネタをちゃんとぶつけないとな!」

「練習もしてきたし、大丈夫だよ」

「ぼくたちも単独ライブしたいね」

「出来るようになるさ」

 くがっちが悟とネタのことや単独ライブのことを話していた。

 くがっちがわくわくしているのを、悟はくがっちの表情から感じていた。

 いつかは自分たちも単独ライブをしたい。

 その気持ちは悟もくがっちも一緒だ。

 そんなことを思っているとブラウンビーツのネタが終わり、会場では歓声が沸き起こっていた。

「いよいよ俺たちの番だな」

「思いっきりやっちゃおうよ」

「もちろんそのつもりだ」

 こうして、シタミデミタシの出番がやってきた。

 シタミデミタシの二人がステージへと向かった。



「皆さんこんにちは! もし衆議院選挙に出馬するならば、公約としてペットを扶養控除の対象にすることを掲げます!」

「ぜってー通らねえよそんな法案! シタミデミタシでーす、よろしくお願いしまーす」

「さとる」

「何だよくがっち」

「国政に打って出るってことはそういうことなんだよ」

「そんなわけねえだろ!」

「ペットを扶養控除の対象にすることで、投票を忘れてペットと遊ぶことばかり考えている人々の票を掘り起こせるんだよ」

「言い方に問題しかねえぞ!」

「大丈夫だよさとるー」

「どこがだ!」

「れいわ新選組あたりが採用してくれるかもしれないし」

「実名を出すなよこういう時に!」

「社民党だと頭が固すぎてさー」

「だから実名を出すなつってんだろ! そもそもそれをやるとして、財源はどうするんだよ?」

「じゃあ、この法案が通った時の税務署の感じやってみるから。さとるは税務署の人ね」

「財源どうするかって聞いてんだよー!」

「こんにちは、確定申告に来ました」

「確定申告ね、はいはい。独身で扶養家族は猫のみーちゃん、1歳? どういうことですか?」

「人間の年齢に換算すると~!」

「何なんだよ急に早口で! 気持ち悪いなあ」

「猫の1歳は人間に換算すると15歳。高校生相当なので扶養控除の対象ですよ!」

「すげえ無茶苦茶言うじゃねえか!」

「昨今は猫の年齢早見表なんてのもネットで見られる時代ですから」

「え、もしかして全ての動物の早見表が存在してたりする? これ税務署の負担やばくねえか?」

「これだからお役所仕事の連中は! そこに愛はあるんか⁉」

「言っとくけど、愛だけじゃどうしょうも出来ないことっていっぱいあるからな!」

「おこんにちは~、確定申告に来ました~」

「ああ、何か次の人がやって来た。何となくだけど、いっぱい家族がいそうな雰囲気だ。えーと、独身で扶養家族はグッピー50匹……」

「も~、早くしてくださいまし~」

「水槽の動物までやんの? 手に負えねえって!」

「あと亀の喜三郎とシルバーアロワナのレイバントがいますのよ~」

「やめてくれ! 税務署がパンクしちまうぞ! 捌ききれねえ! こりゃ民間の力を借りないとどうにも出来ねえ気がするぞ!」

「あーあ、これだからお役所仕事の連中は……」

「役所の人間じゃなくても発狂するわ! 年末調整やってる総務経理の人だってぶち切れてるぞ!」

「税務署はこんな感じになるから」

「何だこのやば過ぎるシミュレーションは! それに何で来る人は独身ばっかだったんだよ!」

「そういう人たちはペットで寂しさを紛らわせてるから」

「くがっち無茶苦茶言うなあ! あんまそういうこと言うもんじゃねえぞ」

「いやあすごい時代がやってくるね、さとる」

「やだよこんなん! 流石にやば過ぎるだろ」

「もし実施したら、牧場の確定申告なんかすごいことになるんじゃないかなって」

「それはもうペットの範疇超えてるんだよ。飼ってる牛や馬が全部対象になるなら税金取れねえレベルだぞ」

「そうなったら法人税全額免除だね」

「無茶苦茶過ぎる。裏でこっそり大増税されてそうな気がするしな……」

「後はさ、働けなくなったお年寄りの生き物に年金を払わないといけないよね」

「やめろって! 人間の年金も四苦八苦してるってのに! だから財源どうするつもりなんだよ!」

「『メイショウドトウ』って言う馬なんですけどね」

「もういいだろ! その辺の有名な馬に年金なんていらねえって」

「何でさー?」

「往年の競走馬なんてさ、今やクラウドファンディングの基金で食っていけるんだぜ」

「知ってるよ。うまぴょい基金でしょ」

「やめろよその言い方! だからさ。ペットに扶養控除や年金なんていらないだろ!」

「でもさ、さとる。相手はお年を召してるからさ」

「そうかもしれないけどさ」

「人間の年齢に換算すると~!」

「それもうやめろ! もういいぜ、どうもありがとうございました」



 シタミデミタシの二人が漫才を終え、会場は歓声に包まれた。

 お客様が笑ってくれているのがステージ上からよく見える。

 ネタをやり切ったので、悟とくがっちは一安心したような表情を浮かべた。

「さとる、新ネタちゃんと出来たね」

「ああ。この日のために作ったところもあるしな」

「これからもいっぱい漫才したいね」

「そうだな、やっていこうぜ。これからも」

 悟とくがっちの思いは同じようだ。

 これからも漫才をいっぱいして、多くの人から笑いを取りたい。

 これこそがシタミデミタシの生きる道なのだ。

 シタミデミタシは、決して歩みを止めることはない。

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未来は下見できない 東西爆笑王座争奪戦編 たたみや @tatamiya77

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