あらゆる問題を解決できる未来の技術。その光景は、少年の心を救えるか
- ★★★ Excellent!!!
本当に「万博」の会場を訪れたような、そんな驚きと「夢」に満ちた時間を体験できる作品でした。
主人公の少年は万博を訪れる。彼の母親は「とある心の病」を抱えており、今は人形のように横たわるばかりの状態になってしまっている。
そのことに悩みつつも万博の会場を闊歩する中で、彼の目の前に「化け物」が現れる。人間のようなフォルムをしているが、目は大きく、肌はじめじめとした質感。
その姿を見て驚くが、相手は気さくな性格をしており、関西弁で楽しそうに話しかけてくる。
そして、「彼」に手を引かれる形で「万博」の中を見て歩く。そこでは未来の技術で可能となっている「レンジでチンするだけでハンバーグに変わる人工肉のもと」や「命の問題も解決してくれそうな発明」などが出てくる。
この辺りの描写がとてもリアルで、「意外と大阪万博に行くと、こんな感じの発明品が実際に発表されてるのでは?」と思わせられました。
本作は、そんな未来のヴィジョンが次々と提示されるワクワク感にまず心を奪われます。更にその先で少年の切実な想いが浮き彫りになり、「母」との思わぬ形での心の交流に、ジーンと胸があたたかくなりました。
「科学の未来」を見て行く楽しさと、少年のひと夏の成長が描かれる瑞々しさと切なさ。
読んだ後に前向きな気持ちになれる、とても素敵な作品でした。