命が終わりを迎えるからこそ、せめて美しく咲き誇りたい

 最期の最期を、「美しく咲かせる」ということ。そんな美意識に満たされた、強く心に沁みてくる短編集でした。

 「枇杷」をめぐる、鬼と娘とのやり取りを描いた物語。
 「侘助」では、生贄として供される一人の娘の物語。
 「梅」では、その美しさゆえに山神のもとへと捧げられる若者の物語が。

 どの物語でも、「その命の最期」について触れられている点が特徴的でした。

 命が終わる時。命を奪われる時。その時に何を想うか。

 普通な怖い、避けたいというような感情が想起するかもしれません。しかし、本作の主人公たちは「命の終わり」に関して恐怖を覚えるより先に、「その終わり方の美しさ」に想いを馳せる。

 どうせ終わるなら、じたばたともがくことはしない。花が最後に美しく咲き、最盛期の美しさの中で散っていく。
 そこに美が見出され、同時にそんな「終わり方」に執着する心が描かれる。

 この、死さえも恐れず、死を踏み越えた先にある「美」を追求する姿が、とにかく読む人の心に強く響いてきます。
 たった一度の命だからこそ、ただ漠然と永らえさせることを望まない。激しく、そして美しく咲き誇ってこそと。

 そんな圧倒的で鮮烈な美に満たされた三つの話。命とは何か。良い生き方とは何か。そんなことも考えさせられる、とても美しい物語でした。

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