ファンタジーBL初心者でも、絶対楽しめます!

とある街にやって来たサーカス――その公演には、昼と夜とで別の顔がありました。人間の醜い欲望を映す夜のサーカスでは、この世の者とは思えぬほどの美貌をたたえた吸血鬼の青年が囚われの身となっていました。吸血鬼は、傷ついても自身の体を再生させることができ、サーカスはその特性を利用して、ステリアを傷つけ、時に観客からも傷をつけさせるという悪趣味な公演を行っていたのです。

伯爵家長男、十三歳のアシュレイは、そこで吸血鬼の青年、ステリアと運命的な出会いを果たします。年齢の割にどこか冷めているような雰囲気のアシュレイだったのですが、これほどの美貌の青年が実在するということに驚くとともに、手渡した花の命をいただく儚くも美しい姿を目の当たりにして、完全に心を奪われてしまうのです。その耽美な描写が衝撃的でした。

この一件から、アシュレイはステリアと心を通わせていくことになるのですが、ままならない状況の中、想いを募らせていく二人の心情が繊細に描かれていました。

そして第一章終盤でついに訪れた転機。これまでの二人の想いが堰を切ったように流れ出し、圧巻の展開でした。もう後戻りはできない――その覚悟を胸に、物語は第二章へと続いていきます。

BLを軸に、神々の加護や吸血鬼の真祖といったファンタジー要素が耽美な世界観に鮮やかな奥行きを与えていて、ファンタジーBL初心者のレビュワーである私にも強く推したいと思わせてくれた、おすすめの一作です!

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