時は22世紀後半。人類は太陽系の各惑星軌道にコロニーを造り、移り住んでいた。
そんな未来の宇宙で人々が熱狂していた、超人気スポーツ——それは“無重力野球”!
これは、新時代の野球に、旧時代の重力野球からプロ入りを果たした女性選手——ニコ・モチヅキが野球殿堂入りを果たすまでの物語である。
SF×オリジナル・スポーツでありながら、抜群の文章構成とストーリー展開で、読みやすさに優れた良作です!
逆境スタートの主人公というのも、王道寄りの構築で安心感があり、かつ完結保証もされてるのが嬉しいところ。
まずは四話まででも良いので、ぜひ読んでみて頂きたい!
この物語の主人公はニコ・モチヅキという宇宙プロ野球の女性選手。しかし、第1話から史上最悪のドラフト1位と酷評されるルーキーイヤーを終えたのでした。ですが、私たち地球生まれの人間から考えると、大谷翔平ばりのとんでもない才能に恵まれているように思えます。(彼女の恵体ぶりの詳細は本編をご確認くださいませ)
彼女の活躍を阻むのは、無重力と重力の感覚の差。そうです。宇宙プロ野球とは、無重力環境で行われる、超新感覚のプロ野球なのです! 重力圏育ちの彼女は、無重力のプレイ環境に馴染めず、それが低成績につながっていたのでしょう。そのあたりの差異については、2話~4話あたりで科学的にしっかりと説明されており、確かにこれまでと同じ感覚で野球をするのは無理だろうと、おおいに納得できうるものでした。作中の人物にも、「重力野球はルールがヘン」と一蹴されてしまっております。
繰り返しますが、ニコ・モチヅキの才能はとてつもないものがあると思われます。それが無重力環境へと完璧にアジャストされた時、私たちはとてつもない偉業を達成する彼女の姿を目撃することになるでしょう。
無重力の中で行われる「宇宙プロ野球」が大人気の未来の世界。
ニコ・モチヅキは宇宙初の女性選手だが、他の選手より小柄で筋力も弱く、成績は振るわない。そんなニコが強くなっていく物語。
宇宙とプロ野球、異色の組み合わせが何とも面白い本作。
当然のように無重力で行われる試合は、「重力野球」を見慣れた私たちからすると奇妙なものだ。選手は走らずに「飛んで」移動し、ボールは落ちることなく飛んでいく。
重力圏出身のニコには、この違いも厄介だ。
不利なことだらけの状況で、ニコがいかにして勝利を勝ち取るのか。
宇宙のように無限の可能性を秘めたニコに、期待するばかりだ。
あなたもぜひ、この「少し不思議な」野球を楽しんでほしい。
発想、設定、展開、すべてが高く調和した傑作。
ええ、傑作です。間違いありません。
SFとしての醍醐味はもちろん、野球物、特にアメリカの野球テーマの映画好きなら読まない選択肢は無いです。
細かいところまで抜かりなく、スポーツ物ではありつつ、トーンはあくまでユーモアを忘れず、SFだからこそ描くことができる独自性もしっかりあります。
SF好き、スポーツ好き、どちらかだけでは書くことができない、そんな作品。
主人公も好感度抜群で、しかし昔のスポコン物ではない。泥臭い部分は残しつつ、いい感じにスポーツ物にありがちで陳腐な部分は無し。その代わりにSF要素をガンと入れる。
王道でありつつ変化球を絶妙なバランスで織り交ぜ、まさに緩急つけたピッチングで物語が進みます。
そしてSFでありがちなやたら説明に終始しがちな部分もうまく人物背景に落とし込むことで、読む手を止まらせずに大事なところはちゃんと記憶に残していく。この塩梅もまた素晴らしいと感じます。
重力ギャップ、星系内開発、そこから生まれる様々な問題を捉えつつ、それをスポーツ作品という枠に入れ込むことで、その射程はどこまでも遠くまで伸び、同時にとても身近に考えることもできます。
ただのスポーツ物ではなく、しかし純粋にスポーツ物としても楽しめる。この奥深くもありエンタメ性をも兼ね備えた本作を、オススメせずにいられますでしょうか。
マスにウケる作品かと言われれば人を選ぶ作品かもしれません。しかしそんなことは気にせず、ぜひ手に取って欲しい。ストレートにならないストレートが、きっとあなたのミットに心地よい球音を残してくれることでしょう。
SFとエンタメを高いレベルで調和させ、作者のここは拘りたいという部分もまた気づく人は気づけば良いし、気づかなくても楽しめる。イースターエッグがあちこちに埋め込まれた作品でもあります。
正直、脱帽です。柄にもなく嫉妬すら感じます。このレベルのSFエンタメをお出しされると、このジャンルでは敵わないなとすら思います。そのくらい刺激を受ける作品であることは間違いないです。
そして、「野球はよく知らないしな」と感じて手を止めている皆さん。大丈夫です。野球のことを知らなくとも、エンタメとして十分楽しめます。そしてここを入口に野球に興味を持ったとしても、それで十分醍醐味はカバーできます。そうなったら、改めて一話目から読んでみれば、二回三回おいしい読書体験になることは間違いありません。
改めて最後に、ぜひ、皆さん、読んでみてください。時間を忘れて読み耽る。この作品は確実にそういう類いの作品です。気が付いた時には、すっかり本作に虜になっているはずです。