蜘蛛という生き物に対する見方が変わるかもしれません。
- ★★★ Excellent!!!
人間によって助けられた生き物が人の姿となって恩返しに来る、という物語。形を変えながら世界中で愛される古典的で美しい物語ですが、本作では「蜘蛛」という誰しもが良い印象を持っているわけではない生き物をモチーフとしたのが珍しいでしょうか。
森で猟師として一人暮らすアレクシスという男性が、水たまりで溺れている小さな胡桃色の蜘蛛を助ける場面から物語は始まります。その場面では、多くの人が普段、蜘蛛に抱きがちな不気味な要素はなく、むしろとても可愛らしい描写をされているところに驚き、そこから早速、物語に引き込まれました。
蜘蛛はクラウディアと名乗る美しい乙女となって、アレクシスとともに仲睦まじく暮らし始めるのですが、順風満帆とはいかず、やはり邪魔立てが入ります。途中では衝撃的な展開もあって、固唾を呑んで最後まで読ませていただきました。
そして物語の最後に記されたメッセージは、蜘蛛という生き物に対する見方そのものを、あらためて考えさせてくれるものでした。格調高く、まるで宝石のように色彩豊かな文章でつづられた、ひとえにとても美しい物語でした。