それでもアルメニアの血は絶えない。

アルメニアの悲劇の女性と知られるザベル。この物語は、わずか7歳で女王として即位し、若くして亡くなった彼女の壮絶な生涯をたどる物語です。

ザベルは女王となりましたが、あまりに若く政務を行うことができないため、大貴族であるヘトゥム家が摂政がつくことになるのですが、これが悲劇の始まりでした。

摂政の専横は極まり、望まない婚姻関係を強制され、女性としての尊厳をことごとく踏みにじられ、それでも脳裏をかすめるのは、父から強く言い聞かされていた「あの言葉」なのでした。

格調高い文体の中で吐き出されるザベルの独白に、当時の女性のままならなさが伝わってくるかのようでした。重厚な歴史の一幕が人間の生々しい感情で彩られるような、すばらしい読書体験をありがとうございました。

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