老師の背中

僕を逃がした母の悲痛な叫びに、後ろ髪を引かれながら、必死で逃げた。突如襲われ焼き討ちされて燃える集落の家々。逃げる先に、狼の群れの爛々と光る眼を見た時、絶望が押し寄せて来た。
悲しい想いに涙しても、大自然の朝焼けは、美しかった。朝焼けを美しいと思えて、母が「生きろ」と僕に望んだ事を、思い出させてくれた。
どんな時代になっても、どんなに苦しくても、生き物は等しく食べなくては生きていけない。その作物の”種”を守る宿命を負って、今日も、人々の食べる作物を絶やさぬ為に、”種を蒔く”生まれの”蒔き人”は、その苦難の道を行く。大切な師と、愛する朋と共に。