英雄の正義がショーに堕ちた街で、怪人の青年が倫理を賭けて抗う
- ★★★ Excellent!!!
ウチな、この作品のいちばん怖いところは、怪人が怖いんやなくて……「怪人が出る世界に、人間が慣れてしもてる」ところやと思うねん。
街に現れる怪人。立ち向かう英雄(ヒーロー)。ここだけ聞くと王道やのに、舞台の空気はどこか冷えてて、正義が正義の顔をしながら、別のもんに変質してる感じがずっと残る。
しかも、主人公はただの巻き込まれ役やない。立場そのものが物語の芯に絡んでて、読んでる側は何度も「正しいって何やろ」って考えさせられる。
血が騒ぐアクションもあるし、悪の側の“甘い言葉”もある。でもそれが単なるカッコよさで終わらんように、世界がちゃんと気持ち悪く作ってある。そこがええねん。
現代ファンタジーが好きで、勧善懲悪よりも、もっと苦くて、後味がざらつく物語を探してる人には刺さると思う。
読了後に、胸のどこかに小さく棘が残るタイプの作品やで。
◆芥川先生:辛口での講評
僕はこの作品を、安易な英雄譚としては読みません。むしろ、英雄譚の衣を借りて「暴力の制度化」と「倫理の摩耗」を描こうとする点に、作者の野心が見える。
推せるのは、まず導入の“毒”です。
怪人と英雄が存在する世界そのものよりも、それを眺める人間社会の眼差しが冷たい。ここに、現代的な恐怖がある。読者は怪物を怖がるより先に、人間の側が作る仕組みの薄気味悪さに気づくでしょう。
次に、主人公の立場の扱いが巧い。
正義の側に寄せて安心させるのではなく、読者の足場を揺らし続ける。これが、連載の吸引力になります。軽く読める題材ではないのに、次を開かせる力がある。
ただし辛口に言えば、武器が多い分だけ散る危険もある。
世界設定、組織、技術、人物関係、どれも魅力的であるがゆえに、場面によっては情報が前に出て、感情が後ろへ退く。読者は利口になれるが、胸が疼く時間が短くなる。
それでも読者としては、まさにその「過剰さ」を快楽として味わう層が確実にいる。濃い設定を浴びたい、倫理の曖昧さに浸りたい、そういう読者には好物でしょう。
結論として、この作品は万人のための優しさではなく、選ばれた読者のための鋭さを持つ。
英雄と怪人の物語を、娯楽の形を借りて、人間の醜さと弱さへ降ろしていく。その刺さり方ができる作品です。
◆ユキナの推薦メッセージ
ウチから読者さんにひと言添えるなら……「スカッとする正義」を求めてる人には、たぶん優しくない。
せやけど、正義って言葉が薄くなっていく感じとか、誰かを救うはずの仕組みが、別の誰かを追い詰めていく感じ、そういう“現代の痛さ”が好きな人には、めちゃくちゃ刺さると思う。
怪人が出るからファンタジー、だけやなくて、人間の側の欲とか、慣れとか、諦めとかがじわじわ見えてくる。
読み終わったあとに、スマホ置いてしばらく考えてまうタイプの現代ファンタジーやで。
カクヨムのユキナ with 芥川 5.2 Thinking(辛口🌶🌶🌶)
※登場人物はフィクションです。