奇跡の霊水、まさかの社会問題に

500mlで2,000円。信者200人。
『ありがたや霊水』は、確かな霊力を持つ――はずだった。

教祖・有形谷栄水は、自らの力で水に念を送り、健康と幸福を与えてきたと信じていた。
だがある日、一人の少年の「実験」によって、その霊水の『別の効能』が次々と明らかになっていく。

沼に撒けば、幽霊が。
トイレに流せば、何かが笑う。
絵の具を洗えば、目が動く。
そして――ついに『人の中身』が、入れ替わり始めた。

暴走する信仰、反転する善意、皮肉に満ちた救済。
『正しいつもり』が、最悪の悲劇を呼び込むとき、
神を信じる者たちの顔が、次々と別人に変わっていく。

これは信仰と狂気と悪意の境界を彷徨う、ある宗教団体の喜劇にして、悲劇。

笑える。だが、笑いきれない。
読後、喉のの奥にひっかかるのは『霊水』のせいか、それとも……。

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