概要
細工職人の旦那様とおぼこい奥さま。ぎこちなく進む二人の一年間。
昭和五年、春。
二十歳になる志村家の一人娘、瑚子の元に縁談が舞い込む。
お相手は九つも歳上の細工職人、安藤肇。
あまり感情を表に出さない旦那様と、逆に感情が溢れてしまう奥さま。そんな互いに戸惑いつつも惹かれあっていく新米夫婦の一年間。
二十歳になる志村家の一人娘、瑚子の元に縁談が舞い込む。
お相手は九つも歳上の細工職人、安藤肇。
あまり感情を表に出さない旦那様と、逆に感情が溢れてしまう奥さま。そんな互いに戸惑いつつも惹かれあっていく新米夫婦の一年間。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!雨と歌と香りが紡ぐ、若夫婦の清らかな愛情譚
若い夫婦の“日々の手触り”がやさしく描かれた最良質の作品です。夕立の帰り道、彼が傘を差し出し「僕の後ろへ」と庇う場面に胸が温かくなります 。その前に彼女が吊るしたてるてる坊主も、ふたりの時間をほんのり彩る小さな祈りでした 。
宴の席で「夕焼け小焼け」をめぐるやりとりがあり、家ではその続きを「いっしょに歌いましょう」と重ね合う。外の賑わいと内の温もりが響き合う場面が素敵でした 。
さらに、彼が贈りものに“くちなし”を彫ろうと花を探すくだりは、愛をかたちにするまなざしそのもの 。花びらを写すことは、彼女との時間を写すことだと感じさせます。
派手な出来事はなくても、雨や歌や香りを通して互いを…続きを読む - ★★★ Excellent!!!新婚の戸惑いと優しさを描く物語
<プロローグ〜新婚初日を読んでのレビューです>
物語は昭和五年の春、志村瑚子の視点から丁寧に描かれる。結婚が決まった瞬間から日常の些細な出来事まで、時間の経過を追いながら細かく感情を描写している。文章は淡々としており、過剰な修飾を避けることで、読者は自然と瑚子の心の動きに寄り添うことができる。
「……お互いのことを、もう少し知ってからでいいと思います」
結婚初夜という特別な瞬間に、静かで理知的な判断を示すこの一文は、感情を抑えた表現の中に人間味を感じさせ、読者に安心感を与える。
全体を通して、主人公の内面描写と旦那様の沈黙や行動のバランスが絶妙で、心理的な緊張感や初々しさが自然に伝わ…続きを読む