囚われの海。生簀の中の、彼ら。


不毛な人生だった、と。
 そう語るにはまだ若い主人公の男。

ずっと魚の夢を見ている。

生簀に入れられて、只一方向に群れ成して
泳いでいる。何が楽しいのか、或いは
何から追い立てられるのか…。
生簀の魚たちの運命は、決まっていると
いうのに。

何かを決めなければならない

 その負荷さえも浮力を邪魔する。いっそ
俎板の上で覚悟を決める。だがそれは
決して覚悟ではなくて、自らが決めた
事でもないというのに。

彼は、魚だ。
       狭い生簀を只、堂々巡りに
泳ぐ。それは
 或いは最も 容易 で、苦しまない
生き方なのかも知れない。


   魚になりたい。


あなたも、そう思った事はないだろうか?



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