科学とファンタジーは果たしてが共存が可能だろうか

 一つのテーマを投げかけてくれる作品でした。

 主人公であるコトミは大学の研究室に身を置くが、そこにルミナと名乗る「妖精」が出現する。
 ルミナは科学者として苦悩するコトミのために、実験の協力などをしてくれるが、コトミはあくまでもルミナが妖精であることを認めようとしない。

 ありとあらゆる超常現象は、「科学」で解明できるものなのか。
 そして、超常現象に説明がつかなければ、科学は「敗北」となってしまうのか。

 ファンタジーな事象が存在し、それを認めた上で科学は科学で棲み分け、不思議は不思議で「そういうもの」として受け入れる。

 この匙加減って、きっと多くの人にとっては難しいラインだろうなあ、と本作を読んで考えさせられました。

 超常的なものが存在し、それの正体がわからないのでは、科学なんて無力でちっぽけなものに思えてしまいそうになる。だから科学を志す異常はファンタジーなどは全否定してしまう。

 とても人間的な感覚だけれど、それは視野狭窄にも繋がる。

 本作はそんな「一つの考えに囚われないこと」についてテーマとして突き詰められているところがとても綺麗でした。

 なんでもかんでも白か黒かではっきりさせることが正しいか。灰色の部分を残したままで、その状態ならではの「答え」を見つけることだって出来るのではないか。

 柔軟であることの大切さを改めて考えさせられ、新しい視野が獲得できるように感じられる一作でした。

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