異世界の王子様をコンサルタント。現代の知識が中世の未開地を救う!?

現代に生きるやり手サラリーマンと、王宮内で疎まれる第四王子が出会い、中世風の異世界で所領を盛り上げていく物語です。

会社系のお話って、書き手が会社員であっても結構難しい(畑違いの部署、或いは経営そのものの知識とか必要……)のですが、この作品は上手くストーリーに落とし込んでいます。
なので読んでて「ん?」みたいな設定への引っ掛かりを覚えないです。
地方を運営していく話のほかに、現代における緊急時対応の話なども出てくるのですが、小難しさを感じずに、すらすら読めます。
作者様の広くて豊富な知識が、作品を下支えしているのを感じました。

キャラクターはいい年齢のシブい方が多い印象で、会話や行動で漢気を感じたり魅力を発揮しています。
シンプルにイケメンや可愛い女の子並べるより、こっちの方が上手く書くの大変なんです……。
一番若いのが、異世界の第四王子様になるでしょうか。
でもこのキャラも、若くして継承争いや義母のイジメなど、苦い経験をしてらっしゃいまして。
既に老成の域にいるのに、現実世界からの来訪者や所領の民から学びを得て更にグングン成長を見せます。
まさに伸び代モンスター、話を追っかけるのが楽しい要因です。

物語はシリアス寄りになるでしょうか。
前述した王宮もさることながら、現実世界の偉い人達もヤラシイ人ばかり。
主人公一行の折衝役ポジの人が心労で倒れないか心配になります。
とはいえ基本的に舞台は、異世界側多めかもです。
新天地で救援物資を運んだり衛生を充実させたり、現代文明を遺憾無く発揮します。
とはいえ問題も沢山あって、それに毎回挑む流れとなります。
これだけ切れ者揃いの現実世界チームでさえ万能になりきれないのは、やっぱり忸怩たるところがありますね。

そんな、異世界と現代が手を取り合って作り上げていく新天地開発。
巷で言われる異世界ものとは一味違いますが、見どころの多さは一味も二味も違います。
異世界系が苦手な方も得意な方も、いける作風です。
あと勉強になる箇所も多いので、読書してる感を多分に味わえる逸品でございます。

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