一見すると「嘘を見抜く犬」というギミックが中心の異能ミステリー。しかし読み進めるほどに、本作の核が“能力”ではなく“心”にあることが分かる。
くーちゃんの力は万能だった。
嘘を視る。毒を察知する。人の闇を照らす。
だが物語の終盤で明かされるのは、その力の本質が「攻撃」ではなく「守護」だったという事実だ。
ことはの喪失から生まれた“白い光”。
守りたいという想いから灯った虹色。
そして、もう恐れなくなった時に、静かに眠る能力。
この構造がとても美しい。
黒幕編では二重人格の志藤という強烈な存在を描きながらも、物語は破滅ではなく“贖罪”へと着地する。
悪を断罪して終わりではなく、再生を許す。
この優しさが作品全体を包んでいる。
そして何より――
くーちゃんがずるい。
重い展開の直後に「きゅーん」。
命がかかった場面でも「ボーロ」。
能力が消えても「ふわふわ」。
物語の緊張をほどき、読者の心を回復させる存在として完璧だった。
最後に残るのは、
嘘を暴く爽快感ではなく、
“守ると決めた者たちの静かな誓い”。
これはミステリーであり、成長譚であり、そして何より
優しい物語だった。
くーちゃん、ほんとにお疲れさま。
ボーロは星の数だけあげてほしい。
嘘の色を暴く、あざとい可愛さも理解しているポメラニアンのくーちゃんと、嘘で傷つけられたことがあり嘘を嫌う少年が出会い、学園で進行していた陰謀を暴く物語。
わたしはくーちゃんが芋ボーロねだってるだけで可愛すぎて陥落したのですが、レビューですので他の方にも伝わるよう他にも素敵な箇所をあげますと、
凄くバランスの良さを感じました。
物語もキャラクターも、描写も過不足なくて読みやすいし、イメージが浮かべやすく親しみやすい。
全方位でバランスの良さをはっきりすると、逆に優等生過ぎて物語がぼやけたりすることもあるんですが、こちらはいくつかある決めシーンをパシッとしっかり決めてくるので、全然物語がダレなくて凄いなあと思いました。
嘘を嘘と一括りにするのではなく、種類が分けられている基本設定も、優しくて好きです。
どうしようもない嘘や、傷ついているゆえの嘘もこの世にはありますから。
本編だけでなく、キャラクターや物語の設定説明と外伝もこちらに含まれるのですが、そちらもとっても面白かった。
この物語は作者さんに愛されてるなあというのがよく伝わって思わずにっこりしてしまうし、外伝の方も面白いキャラクターが出てきて魅力的。
くーちゃん頼りではなく、それぞれのキャラクターが生き生きしていて読んでいてとても楽しかったです。
勿論一番ほっこりさせてくれたのは、くーちゃんですが。
主人公の世界は、“見苦しい嘘”で愛犬を失ったあの日から止まったままです。
零司くんがずっとお守りにしていたお芋ボーロが引き寄せたのは、ポメラニアンのくーちゃんと飼い主のことはちゃん。
二人と一匹が揃い、小さな奇跡が生まれていきます。
そこにいるだけでもふもふ愛らしいくーちゃんですが、失った愛犬と重ねて見ている零司くん視点のくーちゃんは、更に愛情と哀しさみたいなものが混じっていて、私自身も昔飼っていた豆柴を思い出しました。
くーちゃんが示す『嘘の証拠』を二人で追う中で、制裁者として孤独に動いていた零司くんが、誰かのために行動するようになっていき、助けてくれる仲間が増えていく変化も魅力です。
登場人物より一歩先に読者が推理できる仕掛け。ミステリーとしても巧みで、解答編の前にもう一度読み返したくなる作品です。
主人公は過去に人に裏切られ、最愛の犬も失くし、人を信じられないでいました。
そんな彼が出会ったのはヒロインと彼女の相棒、ポメラニアン、くーちゃん。
くーちゃんにお芋ボーロをあげると、なんとくーちゃんの見えてる世界が見える。
その視界では人の心の色が見える。嘘は黒色。
その力で彼は追い詰められている人たちを助けていきますが……。
上手いのは、嘘はわかっても、どんな嘘をついているのか、なぜ嘘をついているのかはわからない。だから、そこは推理していく必要があります。
そして彼の行動と共に、かつて悪意を持って人に接していた人たちの行動までも変わっていく。その人間模様を見ていただければと思います。
あと、くーちゃんに癒されます。嘘を暴くスーパーワンちゃんだけど、きりっとしたシェパードでも頭のいいボーダーコリーでも無い、ポメラニアン。
くーんと鳴くくーちゃんに癒され、温かな読後感を共有したいと思わせてくれる作品です。
嘘を抱える人を見つけ、かつ、色により嘘の種類を見分ける犬と出会って異能に目覚める。もう勝ったと言える設定だけではないのが本作の素晴らしさ。
作者様による解説を引用します。
> 限定カードの盗難、生徒会選挙の不正、学園祭での舞台崩壊――。
> 一見無関係に思えるそれらの事件は、すべて裏で仕組まれた「実験」によって操られていた。
実力を持つ生徒が運営する生徒会、スターを擁する演劇部、さらには学園の平和を脅かす陰謀。
誰もが見たいものを全部詰め込んだ、心躍る学園物語を作り上げています。
そこに、少年少女による「友情以上、恋愛未満」もきっちり組み込んで。
この小説の、楽しさに嘘なし!
嘘をテーマにした学園物語と聞くと、少し重たい印象を持つかもしれません。けれど本作は、単なる推理劇ではなく「嘘とどう向き合うのか」をやさしく問いかけてくれる青春譚です。主人公は嘘を嫌う孤独な少年。そこに相棒や仲間が加わり、学園で起こるさまざまな出来事を通して、読者は「嘘は本当に悪いものなのか?」という根源的な問いへと導かれていきます。嘘は人を傷つけることもあれば、守ることもある――そんな人間関係の中に潜む嘘の姿を、時に鋭く、時にあたたかく描いているのがとても印象的でした。物語を追ううちに、真実とは何か、そして誰かを信じるとはどういうことなのかが、自然と心に残ります。学園ミステリーでありながら、読み終えた後にやさしい温もりを感じられました。
この作品の魅力は、なんといっても「嘘を色で見分けるポメラニアン」という斬新な設定です。主人公・零司の孤独感と正義感、そして天真爛漫なことはとふわふわのくーちゃんとのコントラストが絶妙で、読んでいて心が温まります。
学園を舞台にした事件の数々も、単なる謎解きを超えて、登場人物たちの心の成長が丁寧に描かれているのが印象的。特に零司の過去の傷と、新しい仲間との出会いによる変化の描写が秀逸です。
「色で見える嘘」という視覚的な表現も面白く、読者も一緒に推理を楽しめる仕掛けになっています。軽やかな文体なのに深いテーマも扱っていて、一気に読んでしまいました。
動物好きの方、学園もの好きの方、そして心温まる友情ストーリーを求めている方には特におすすめできます。
過去に自分のペットと悲しいお別れをした主人公、九条くんがポメラニアンと出会うことから物語がスタートします。
ポメラニアンのくーちゃんとコンビで「嘘を見抜く能力」が発現した結果、学園の事件に次々と関わっていきます。
能力が芽生えたと言っても、そもそも九条くんが割と漢気溢れる感じで、とても好印象です。
イジメをする不良を懲らしめたり、クラスメイトの暗い表情を察知して夜の学校に走ったり、悲しい過去にも負けずに真っ当に、真っ直ぐな生き方をしていて格好良い主人公に仕上がってます。
ストーリーとしては、単発の事件に関わりながら、その裏で暗躍する学校の黒幕を追っかけていく形になるのでしょうか。
一つの事件を解決しながらも、黒幕までは一息に辿り着けず、そこが今後のワクワク感を誘います。
キャラクターでは、ヒロインのことはさんが、割と良い性格をしていて非常に面白かったです。
急になぞなぞを吹っかけて来たかと思えば九条くんのピンチにくーちゃんと共に颯爽と現れ、かと思えば閃きで走り出す九条くんを優しく見送ったり、平均点高めのムーブを披露します。
魅力的な三人組(?)が繰り広げる学園ミステリー、ミステリーであるものの読み易く、万人受けする作品となっていました。