その愛は、呪いか、祝福か。

この物語の魅力は、なんといっても主人公、桃さんのユニークさ。
異国育ち、お菓子作りが得意で、聡明で美しい。個性的な言動はどこに行っても注目を集め、皆を笑顔にする。
思わず吹き出すようなユーモアが随所に散りばめられ、読むのが楽しみで手が止まりません。

特筆すべきは、脇役とも思えるような登場人物たちそれぞれにも、これまで積み重ねてきた人生が、行動原理が、思考が感じられ、みんなが各々の人生を〝生きている〟ということ。

そして。
彼女のその人生の中で、共に歩み、別れ、再会し……
愛し愛される、男性たち。

人間らしい狡さ。弱さ。欲望。哀しみ。
――救い。
作者様の人間理解と筆力にただただ、感服いたします。

愛とはかくも苦しく、しかし生きるよすがとなりうるのか。
愛に生きる……そんな使い古された陳腐な言葉では表現しきれないほどの、まるで呪い、あるいは祝福。

あなたの心の中の小さな傷が、美しい異物となりますように。
ぜひご一読ください。強く、おすすめいたします。

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