概要
一部『イソヒヨドリの町で』のエピソードを踏まえた箇所があります。よろしければ、先にそちらをお読みいただくことをお勧めします。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「ふつう」の枠組みから外れた二人の軌跡
高校を卒業した章と裕佳子。
一度は離れた二人の人生が再び交差するところから、物語は動き出します。
前作が弓道場の幽霊を巡る青春群像劇だったのに対して、本作は文字通り、地に足のついた現代ドラマへと姿を変えていました。
ゲイ当事者として読み進める中で、章の抱える息苦しさには覚えのある痛みがありました。
地方の田舎町で、異性愛や家族形成といった暗黙の規範からこぼれ落ちたとき、自分のなかに静かに積もっていく自己否定。
本作はその感覚を、声高に訴えるのではなく、方言や食卓の匂いといった生活の肌触りのなかに溶け込ませて描いています。
属性を記号にせず、組み合わさらない愛の形に正面から向き合った誠実…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「ふつう」の定義がないのに、「ふつうであろう」ともがく私たち
多くの人が「ふつうの人」であろうとする世の中。でも「ふつう」である必要なんてないし、そもそも「何がふつうなのか」という定義すらない。なのに「ふつう」を求める。そんな私たちは、実は苦しみながら生きているのかもしれません。
本作の主人公である川野くんも、「自分はふつうではない」という悩みを持っており、自らを抑圧しながら生きてきました。しかし彼は最も親しい友人であった裕佳子ちゃんと再会することで、その抑圧から自分を解放できるようになっていきます。
もちろん簡単にはいきません。自分を認め、許すことは案外難しいものですよね。それでも諦めず人生を前に進めようとする川野くん、裕佳子ちゃんに、きっと感情移…続きを読む - ★★★ Excellent!!!料理に注目
人間という歯車の形には規則性が無くて、完全に合致する存在というのはあり得ないです。でもどこかでひっかかることはある。
マジョリティであることを普通と呼ぶとして、そうあることは良い事なんでしょうか?良いか悪いかの基準も曖昧です。それが幸せなんでしょうか?
この物語はなかなかに触れにくい要素を扱って、そういうテーマを紡ぎ出しているように感じます。前作にはミステリー要素がありましたが、本作は人間ドラマです。
ただ読まれる方は是非前作「イソヒヨドリの町で」から先に読まれることをお勧め致します。
私の稚拙な表現力では、すぐにネタバレになってしまうのでここでは本筋と違う事を書いておきま…続きを読む - ★★★ Excellent!!!普通になんてなれない。
男子高校生、川野くん。
転校生だった、崎里ちゃん。
高校一年生で仲良しだった二人は、その後、高校を卒業し、それぞれの進路をとり、道は別れ、また、交差する───。
「イソヒヨドリの町で」の続編。
これはね……。ぜひ、「イソヒヨドリの町で」から読んでほしいな。
濃いの。
人の感情が。
どうしようもできない恋が。
崎里ちゃんは〇〇に恋してるし、川野くんは、△△に恋してる。
人間関係、とか、自分磨き、とか、そういうレベルの話じゃなくて、「そこに恋したら、かなわないよぉぉぉ! 無理だよぉ……。」と言いたくなるほど、無理筋の恋を、二人は抱えます。
それが、美しい風景、郷土料理とともに、繊細なタッ…続きを読む