ラストの切なさと爽快感、未来への広がりが魅力的
- ★★★ Excellent!!!
王国の長男として生まれたにもかかわらず『2番目』と名づけられた王子のことが語られている作品です。
彼は、様々な不運や裏切りに見舞われながらも、覇権を争う戦で頭角を現すまでに成長する逞しい若者でした。
語り手は、そんな彼の親友に相当するドワーフの青年。
その饒舌な語り口からは、彼らの距離の近さが感じられ、二人の親しさや楽しく過ごした子ども時代が彷彿とさせられます。
語られる内容は、上記の通り不運や裏切りが多いのですが、カラッとした調子の語り口には、そういった不運に屈しない様が感じられます。
この明朗な語り口自体が、語られる対象である王子の人間的魅力・芯の強さをも、よく表しているようでした。
そして、なんと言ってもラストの切なさと爽快感がたいへん魅力的です。
出来事自体は非常に悲しい。
けれど、王子にも、そして語り手であるドワーフの青年にも、悲しさに屈しない強さがあることが、ここまでの文章を読んでいて読み手にも分かっている。
だからこそ、悲しくも、決して折れない力強さを感じられます。
「光り輝く王」という言葉が、上面だけのものでなく本当に輝きを感じさせてくれるのです。
細かに描写されてはいなくても、駿馬に乗って駆ける輝く王子の姿が見えるようです。
ドワーフの青年の目に映ったものを、読み手(である私)が共有できたということです。
素晴らしいと思います。
きっと、王子はこれから先も「光り輝く王」として、「世界を取る」のでしょう。
そう確信できるくらい、未来への広がりを感じるラストでした。