コミカルな文章とユーモア、ひねりの効いた展開の「笑い×ホラー短編」

ホラーではありますが、タイトルの通り怖さが全面に出ているのではなく、コメディ寄りの描写の多いオムニバス短編集です。

ユーモアと恐怖というのは相性が良い、というのを常々思っているのですが、それを再確認できました。
「笑い×ホラー」にも様々なタイプがありますが、
この作品は、ホラーという舞台を用意し、そのホラーの「お決まりの展開」を独自の視点から面白可笑しく捻って、思いもよらない結末へ導いてくれます。
ラストに「オチ」「どんでん返し」のあるショートショートのような面白さもあり。
そのため、最後のオチを見たい、というのが作品の吸引力にもなっていました。

また、心霊現象を扱いながら、心霊現象自体は作中でもあまり「怖いもの」として描かれてはいません。
むしろ全く別の意外な部分の「怖さ」が示され、作品の妙味に繋がっていました。
読み手が恐怖を感じると言うより、心霊現象よりも別の部分に「怖さ」があることのおかしさが、作品のユーモアに繋がっています。

文章が、軽めの一人称であったことも、読みやすい理由の一つでしょう。
毎話毎話、するする読んでラストまで辿り着き、ああなるほどと腑に落ちて終わる、というふうに綺麗に構成されていたのも魅力です。

個人的には、1話目の「丑の刻参りをしたいけれど」が好きでした。
1度オチがあり、さらにもう1つオチが来る、という二段オチ構成で、非常にお上手に作られていました。
語り手の祖父の直面する問題も、「確かに」と思えるもので、そこからの行動、その行動の結果が、どれも面白く上質なショートショートとして機能していると思います。

「呪術の返し方」も有名古典落語を上手く利用し、なるほどと思えるラストに導いていってくれます。
ラストの一文に、少し背中が寒くなるような気がするのも、笑いからの寒気という良い塩梅で描かれていました。

コミカルな文章とユーモア、ひねりの効いた展開で楽しませていただきました。

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