喪失と絶望の先にある景色とは

人生の底辺にいるアル中の詩人。
自分を突き放すような冷めた口調で語りつつも、何かを求めることを捨てきれず、がんじがらめの心の中でもがいているさまが、頭の中で鳴き続ける蝉と重なります。
人との出会いやかかわりや喪失の中で、彼女は何を見つけ、どんな出口にたどり着くでしょう。
人と繋がるとはどういうことか、失うとはどういうことか、考えさせられます。大事だったはずのものがある日突然消えてしまう恐怖。なにもかも終わらせたい願望。
でも失うことを恐れるあまり過去の写真に捉われては先の景色は見えないでしょう。龍の背中を登れる運命を授けられているのは、まだ進めるということです。この先の人生はきっと違った景色を見られるはず。
主人公の表情が浮かぶような、清々しいラストでした。

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