逆パターンですが、私も著者のクリスさんと同じように、10歳の頃からフランスで生活することを夢見て生きてきました。この小説で書かれていることは、私が経験し、考えてきたことととても共通点が多かったので、70エピソードもありますが、夢中になって読んでしまいました。
私が日本にいなかった、特に2000年以降今日までの日本社会に対する著者の考察はとても興味深く、考えさせられました。豊かななんてものではない、普通ではなかなか経験できない環境で様々な仕事をこなされ、多くの異なる業種の日本人たちと深く交流され、日本人よりも日本人意識が身についていて、お見事!としか言えないです。
そしてこの小説全てが日本人よりも理路整然とした流暢な日本語で書かれていて、日本社会の考察部分では、著者がフランス人であることを忘れるくらいでした。
書かれていた、≪私の国は、私の中にあるすべてのもの≫というフレーズは、グサッときました。今後のことや私のアイデンティティを考える時の思いの中心に大切においておこうと思います。
どうも有難うございました。
まずはページを開いてください。その美しくなめらかな読み心地と卓越した語彙力、詩的な表現力を前に、「これが日本語を母国語としない人の文章か」と目を疑うことでしょう。そしてページを繰るうちに、それが著者の絶え間ない努力と熱意の賜物だということが分かるはずです。
日本の「光」に魅せられた少年が、その一途な情熱を決して冷ますことなく、ひた走るように日本語の習得へ、そして日本の生活へと突き進む姿には敬服の言葉しかありません。そして日本での凝縮した暮らしの中でときおり描かれるきめ細やかな情景、心象描写には、多くの日本人が共感を覚えるのではないかと思います。
この感性は勉強して得られるという類のものではなく、著者の鋭い洞察眼と繊細な思慮深さがあってこそのものです。
日本の現在や未来に対する客観的な分析にも、この国を大切に思えばこその落ち着いた愛情が溢れており、著者が今この作品を「書かねばならなかった」心情を鑑みると、この先この国がどこへ向かうか、その中でどう生きるのかという問いを、日本人全体が自らに投げかけなければならないのだと感じます。
豊かな知識と人生経験に裏打ちされた読み応えのある一冊です。ぜひともお手に取ってじっくりとお読みください。