概要
出汁は取ってはいけない。引くものである
「日本の出汁の旨味を生んだのは、昆布ではなく倉庫である」
食文化史の准教授・鰹木は、学会でそう言い切り、会場の失笑を買った。最前列でかつての恩師が眼鏡を拭くのを見ながら、彼は誓う。倉庫の環境は数字で書ける。数字で書けるものは、機械で作れる、と。
自作の装置「蔵守一号」を抱え、海鮮料理目当てのゼミ生・汐里を連れて北海道の港町へ。訪ねた昆布問屋の石造りの倉庫には、二十五年眠り続ける昆布の束があった。「先代の管理は、この機械で代替できます」と胸を張る鰹木に、無口な老主人が差し出したのは、四十年分の古い帳面だった。
「代わりができるってんなら、これを全部、そいつに覚えさせてみな」
数字と機械を信頼するちょっとピントのずれた学者と、数字にならないものを知る老人。港町の倉庫で過ごす数日間を描く短
食文化史の准教授・鰹木は、学会でそう言い切り、会場の失笑を買った。最前列でかつての恩師が眼鏡を拭くのを見ながら、彼は誓う。倉庫の環境は数字で書ける。数字で書けるものは、機械で作れる、と。
自作の装置「蔵守一号」を抱え、海鮮料理目当てのゼミ生・汐里を連れて北海道の港町へ。訪ねた昆布問屋の石造りの倉庫には、二十五年眠り続ける昆布の束があった。「先代の管理は、この機械で代替できます」と胸を張る鰹木に、無口な老主人が差し出したのは、四十年分の古い帳面だった。
「代わりができるってんなら、これを全部、そいつに覚えさせてみな」
数字と機械を信頼するちょっとピントのずれた学者と、数字にならないものを知る老人。港町の倉庫で過ごす数日間を描く短
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!研究室の中だけではわからない、職人の「勘」の世界
あぁ~っ、良いですこういうの!
職人さんのいぶし銀な経験則が生き生きとしています。
まさに職人の仕事が光る、図太い読み応えが感じられます。
取り扱っている題材が昆布出汁のお話だからでしょうか、実に味わい深い、純粋な「旨味」がひしひしと感じられるかのような読了感です。
一方で学者の鰹木さんも、カチコチなデータ主義な人間ながらも、丁寧に先代の積み上げた40年の歴史に目を通し、データとして活用できるよう丁寧で真摯な姿勢を見せています。
頑固者に見えた職人さんも、この部分は素直に認めてくれたのかな、と思うと、心揺さぶられるものを感じずにはいられませんね。
昆布職人の40年分の濃厚な重みが感じられ…続きを読む