「AIに心はあるのか」
この問いを扱った物語は、これまでにもたくさんあったと思います。
けれど、この作品を読みながら私が考えていたのは、少し違うことでした。
心があると証明できなかったら、私たちはその存在をどう扱うのだろう。
人間らしく振る舞えば心があるのか。
感情らしい反応を示せば心があるのか。
自分の意思で何かを選べば、それは心なのか。
おそらく、どこまで行っても完全な証明はできない。
でも考えてみれば、それは人間同士だって同じなのかもしれません。
目の前にいる誰かの内側に、本当に自分と同じような「心」が存在していることを、私たちは直接確認することができないのですから。
この物語で面白いのは、人間である律がどこか機械的で、アンドロイドであるSN-01のほうが妙に人間臭く見える瞬間が何度もあることです。
けれど律は、SN-01を無理に「人間」にしようとはしない。
恋人や家族といった分かりやすい役割を与えて、その枠に押し込もうともしない。
機体なら機体のまま。
分からないなら、分からないまま。
それでも一緒に食事をして、仕事をして、くだらない冗談を言って、少しずつ互いのことを知っていく。
その積み重ねを読んでいると、いつの間にか「このAIに心はあるのか」という問いそのものが、それほど重要ではないように思えてきました。
心があるから大切にするのではなく、
理解できたから隣にいるのでもなく、
完全には分からない存在を、分からないまま尊重する。
それでいいのではないか。
検死という少し冷たい響きを持つ仕事を通して、機械の記録を読み、人間と機械が残した関係を拾い上げていく物語。
SFであり、ミステリーであり、何より「他者とどう向き合うのか」を描いた物語だと思いました。
第15話まで読了。
この先、律とSN-01がどんな答え――あるいは「答えを出さないという答え」に辿り着くのか、続きを楽しみにしています。
拝読させていただきました。
おもしろいですねw。
業務記録という少し乾いた形をとりながら、SN-01をはじめとする機体たちと人間の泥臭い関わりが丁寧に描かれていて、最後まで楽しく読ませていただきました。
「パワハラトーク変換くん12号」や「培養体ウーパ」といった独自の言葉選びの面白さだけでなく、愛玩用機体やケア・アンドロイドの検分・再審理を通して見えてくる人の弱さや心の揺れが深く胸に残りました。
どれだけ精巧に作られた機械の仕組みであっても、それを使う人間の迷いや執着が思わぬ綻びを生んでしまうところに、作者様がこの世界に込めた優しい思いを感じました。
「組織セカンダリーの集い」の調査から南アンドレア共和国の電気街へと広がっていく先で、彼らがどんな日々を重ねていくのか続きをゆっくり楽しみにしていますww
※第15話まで読了した時点での感想です。
女性検視官の『灰崎 律』と、
最新型AIを搭載した男性型アンドロイド――SN-01こと『白波 雫』のタッグが織りなすSF小説です。
律は、人付き合いが苦手で、拗らせ気質のドライな性格。しかし、薄情でもない。
一方SN-01は、アンドロイドでありながら、律の前には結構ウェットに振る舞い、人間側の律よりも表情豊かなキャラクター造形。
この二人のシニカルでブラックな絡みが本作の特長です。
キャラクターも血が通っており、この世界で生きている生活者の匂いが出ています。
作中の描写でも
起床する → 食う → 出勤 → 仕事する → 昼休み → 食う → また仕事 → 退勤 → 帰宅 → 食う → 風呂 → 寝る。
といった日常の反復動作が組み込まれています。
その合間にちょっとした事件が起きたり、変なガジェットを使って笑われたり、残業言い渡されてげんなりしたり、と地に足付いた描写が良いです。
一話あたりのボリュームも多く、丁度1時間ドラマを視聴しているような質感。
じっくりと腰を据えて読みたい方にもオススメできます。
また、毎回ストーリーの切り口にも工夫があり読者を飽きさせません。
続きも追っていきたいと思います。
人工知能搭載機体の「検死官」・灰崎律のもとに、自ら主人を選んだ未公開の最高傑作SN-01(白波澪)が転がり込んでくる。世界の何もかもを見透かすような高性能と、律のために完璧な紅茶を淹れる日常が、同じ部屋に同居している。
この作品の魅力は、「心があるのか」を結論で片づけないところにある。証明不可能なものを証明不可能なまま置き、その隣で検死業務が進み、契約書が交され、夕飯のピーマンが選ばれ、距離が少しずつ変わる。合理的でやや策略家にも見える律と、言葉をかけられることを喜ぶ澪の立場の微妙な逆転が、人間と機械の関係を静かに揺さぶる。
重いテーマを扱いながらも、温度差のあるオチや日常のディテールが作品の骨格を支えている。残酷描写・性描写ありの注意は正直に書かれている通りだが、それらは安易な刺激ではなく、機体と記録と「正しさ」を扱う物語の一部として機能している。
連載中の現時点でも、二人の関係が今後どう変化するのか、澪が律を選んだ理由の奥がどこまで見えるのかが気になる。心の輪郭を、夢ではなく検死の記録と紅茶の湯気でなぞるSFとして、強く推せる一作。