第29章終了です。お付き合いありがとうございました。
人として尊重された経験のないベニは、郁が言っているように、他人を思いやるという、人が人として生きていくために必要な“当たり前”を知る機会をもずっと奪われてきました。
結果、解放されてめでたしめでたし、幸せに暮らしました、にはなれなかったという次第。
人間は生きていくのに尊厳を必要とする生き物ですので、それを蔑ろにされると、心に傷、しかも人生に影を落とすようなひどい傷を負うことになって、自分と周りを傷つけ始めます。
他者を軽んじる人や仕組みを見かけるたびに、それ、いずれものすごく怖い形で返ってくるよ、と思わずにはいられない。うん、自分勝手って生物の欲求という面では正しいんだけどねー、実際最初は有利に見えるんだけどねー、歴史見ても周りを見ててもねーってことで、続きます。
江間はこの世界にいるがゆえに、郁大事のあまり、人を傷つけることに対する躊躇を失いつつあります。
郁がベニをシドアードから庇ったのは、ベニを止められなかった自責の念やシャツェランの人気を落とさないためという目的もなくはないですが、何よりそんな江間のためです。必死も必死、そのために周りの目とシャツェランを利用した、と。
違う文化の中に入って一年ぐらいかな? カルチャーショックが終わるぐらいに、自分の中の価値観が揺さぶられ始めるんですが、違う世界で、価値観どころか倫理観まで揺らぐとなると、そりゃあ怖いだろーなー、と。
揺れない福地は、ある意味最強かもしれない。
次章は、菊田との別れとメゼルに戻って、の話になります。
そう――ついに! 硝酸! ひゃっほい!←一緒に喜んでくれる人は多分いない
が、ちょっとお時間いただくかも、です。のんびりお付き合いいただければ幸いですー。
ではまた。
昨日皆既月食を見ました。雲間にのぞく赤い月…はいいけど眠かった。
ついでに、夕~朝はそれなりに涼しくなってきたなあ、と実感しました。
早く秋来るといいなーと楽しみにしつつ、おやすみなさい。良い夜を!