ネットフリックスで『マチルダ・ザ・ミュージカル』を観ました。ロアルド・ダールの児童小説はこちらでも人気がありますが、私は書籍で読んだことがありません。『チャーリーとチョコレート工場』など最たるもので、ちょっと奇妙な世界観、子どもの鬱屈さを映し出したようなストーリーが不思議と魅力的です。
児童文学、リンドグレーン、ケストナー、エンデ、サン=テグジュペリなどは思い出深く、でもハイ・ファンタジーの長編は読んだ記憶が…… ピッピのフルネームをまだ覚えています。ちなみにこちらでも『長くつ下のピッピ』と『はてしない物語』は書店で見かけましたが、ケストナー作品は見当たりません。なぜ……
話が逸れました。『マチルダ』を観ていて、バスチアンを思い出しました。バスチアン・バルタザール・ブックス。『はてしない物語』に登場する男の子で、母親を亡くしてから父親とも距離ができてしまい、運動も苦手、学校ではいじめられているバスチアン。対してマチルダは天才少女なのですが、両親には理解されず蔑まれ、学校にはとんでもない校長がいるのです。二人の共通点は、辛い現実を乗り越えるために想像力を駆使するところ。怒りや悲しみやるせなさを、想像の物語のなかで理解して、立ち向かっていこうとする。二人の想像の世界は全く異なった色彩ですが、それはもちろん、人間の個性が多様である証拠です。
どの子にとっても学ばなければならないことはたくさんあり、世界はそれほど優しくはないのですが、自らを勇気づけるために、想像力って大切なんだなあ。もう一つの物語に、子ども時代を仮託して、皆んな大人になっていくのかな、などと思いました。
友人が地元に帰り、高齢の親戚女性と散歩に出かけた際、お寺を囲む林を抜けるところで、ここには幼い子どもたちが眠っているんだ、と言っていたとのこと。戦後何があったのか友人は知らなかったけれども、「その子たちが存在したことを言葉にして、誰かに伝えることが、彼ら彼女らにとっても私たちにとっても、救いになるんじゃないかと思った」。大人にとっても、物語は重要です。
マチルダに親切にしてくれた先生も、苦しい過去があったと知ってマチルダは叫びます。
“私の思い描いていた物語は、あなたの物語だったんだわ!”
ロバートソンは映画『ベイブ』のロケ地です
