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【魔導士物語】第十五話「ローファ村」を掲載しました

https://kakuyomu.jp/works/16817330649026392153/episodes/16818792440014631162

そんなわけで、第十五話です。

村長のハンスは、まだ三十代半ばの壮年で、がっちりした体格のいい男です。
奥さんの名前は不明ですが、ぽっちゃりとしてとても気立てのよい女性です。

本文で説明がありますが、ハンスは前村長の次男として生まれました。
上に兄がひとり、下に弟と妹が二人ずつの六人兄妹で、田舎の農家では、これくらい子どもがいるのが普通でした。
というのも、田舎は医療体制が整っておらず、子ども(特に乳児)の死亡率が高かったからです。
この辺は、生物としての本能なんでしょうね。

ハンスは次男だったので、徴兵に採られて、五年(十九~二十三歳)の軍務についています。
その間に、長男が急死しました。死因は腸チフスだったようです。
帝国は医療先進国でしたが、田舎にはまともな医者がいなかったので、腹痛止めの生薬を与えるしかなかったようです。

家族は当然ですが、ハンスにそのことを知らせましたが、事故(結構あった)で届きませんでした。
そのため、除隊して帰ってきた彼は、家の跡取り&村長の後継者となってしまいます。
数年前に、父である前村長が亡くなったため、まだ若いハンスですが、村長になっています。
貧乏な村の村長は気苦労が多く、それを身近で見て知っているハンスの弟たちは、自分にお鉢が回ってこなかったので、ホッとしています。

ちなみに、農家の次男以下の男子は家を継げませんし、よほど余裕のある家でなければ、分家して独立することもできません。
じゃあ、どうするのかというと「若勢(わかぜ)」と呼ばれる使用人、あるいは裕福な地主の小作人となって、働くことになります。
これが不幸かと言うとそうでもなく、彼らは使用人ですから、まず徴税義務がありません。
したがって、凶作や飢饉に遭っても、地主が生活を保証してくれるので、自作農よりも楽ができるのです。
もちろん、使用人同士で結婚もできまし、子どもを生み育てることも、普通にできました。

ちなみに、男性使用人を「若勢」というのに対し、女性の使用人は「女(め)らし」と言いました。
若勢も女らしも、十歳前後から奉公に出て、男子は農作業を学び、女子は炊事・洗濯・裁縫などを教わりました。
商才があると見込まれた賢い子は、読み書きと計算も教えられ、いわゆる番頭のような立場となって、最終的には独立が許されました。
つまり、若勢や女らしを雇うような富裕層は、こうした子どもたちの職業訓練と教育に責任をもっていたということです。

さて、次回はアデリナとの再会です(頼む、そこまで進んでくれ!) どうかお楽しみに!

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