結論から言えばそうなのでしょうが、とてもそれだけとは思えない、円熟した魅力が溢れるこの一作。
知っている人はイヤという程知っていて、知らない人にはさっぱりといういつもの解説です。
いまでこそ海を渡った向こう側でもリメイクされている宇宙大怪獣キングギドラなんですけど、これは実はピンチヒッターで登板したらトンデモないルーキーだったという奇跡的な存在なのです。
時に昭和39年、西暦…わかりません。昭和人間なので。
黒澤明監督の畢生の超大作「赤ひげ」の撮影が伸びに伸びて、東宝の正月映画にボガっと穴が開き、「なんとかしてくれー」と言われて円谷・本多組が完成させたのが「三大怪獣 地球最大の決戦」です。
最初は、東宝が産んだ大怪獣スター、ゴジラ・モスラ・ラドン…予告編のナレーションまんまですけど。
これに敵として設定されたのがキングギドラ。
今でこそ全身キンキラの金ですが、当初は翼が青、金色、赤という配色でした。当時のソノシート絵本や、一番明瞭なのは1980年代キングレコードから発売された「SF特撮映画音楽全集4」のレコードジャケットの鮮明な写真でしょうか。
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ただ、三つ首の龍が翼を持って空を飛ぶという映像はソビエト映画1959年、昭和31年の「Илья Муромец(巨竜と魔王征服)」に登場する三つ首翼竜Змей Горыныч(ズメイ・ゴチニチ)で映像化されているので、それに影響を受けた…受けた?受けたんでしょうねえ。ある意味見たまんまなのですが。
まあ、一度YOUTUBE等で検索して鑑賞頂いて、お考えいただくのが一番宜しいかと思います。
「日本誕生」の八岐大蛇退治と比べると、金も労力も向こうの方が掛かっているんですけど、いるんですけど…
関係なですけど、モスフィルムの色って、癖になりませんか?
ズメイ・ゴリニチはロシア圏でよく登場する三つ首、もとい5?7?9?12?
…多頭の龍で、女性を攫って英雄に退治されるという、ヒドラや八岐大蛇とよく似た存在だそうで、興味ある方はWIKI等で調べてみてはいかがでしょうか。
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もとい。
三大怪獣スター共演、金色の宇宙怪獣、それを繋げる本編。まさに落語の三大噺のお題みたいな超絶難しいお話しを、「私は金星人」で力押しで進めてしまう関沢新一の脚本、ゴジラとラドンを擬人化させてしまった円谷英二、それを嫌いキングギドラのデザインも好きになれずとも見事に纏めた本多猪四郎監督、この無茶苦茶と言ってもいい物語を怪獣の主題を交互に演奏し、耳で纏めた伊福部昭、そして安定の東宝俳優陣。
東宝映画円熟の力のなせる業と言うべき、妙に地に足が付いた作風故に突拍子もないキングギドラという新怪獣のデビューを迎える素地があるといいますか。
怪獣と自衛隊の戦いが無かったり、横浜以外の実在の都市がおざなりだったり、やはり色々力不足を感じる作品ながらも正月映画戦線で超大作の代打を務め切った、そして後々に続く偉大なキャラクターを生み出した功績も含めて、
「やっぱ東宝はすげえや」
という単純な感想しか生まれないこの一作は。
やっぱすげえや。