【結果発表】公式自主企画「第2回カクヨムU-24杯」
https://kakuyomu.jp/info/entry/u-24_2025_result私が応募していた『ラブレター』は最終候補作品に選ばれました。
ラブレター
https://kakuyomu.jp/works/822139836377810853私にとって小説を書くことは自慰か告白だ。どちらにせよ独りよがりなものだ
『ルピナスによろしく、を追って』のあらすじ
匿名作家、綺音雲呂阼が最新作『ルピナスによろしく』を発表。作風として確立された残虐な描写を含む、青春学園ミステリー作品だった。
直後、綺音雲呂阼はSNSで、この作品は「私の身に起き、私が感じた全てを書きました。」と投稿。ミステリー作家にとって、作品をノンフィクションであると語ることは罪の告白に等しい。
綺音雲呂阼は殺人を犯したのか、綺音雲のファンであり、雑誌編集者の及川景は編集部長や、助手、その他にもたくさんの力を借りて、真実に迫っていく。
snowdropさんが選出してくださり、感想もくださいました。
本当に学びの多い感想で、よく頑張ったと思うと同時に、もっと頑張れたとも思うから、また書かなくちゃなと思いを新たにしています。
私が選んだ第2回カクヨムU-24杯作品の感想
https://kakuyomu.jp/works/822139840198003498私は私のために言葉を紡ぎますが、ミステリーを書くときは、伝える先に一人の先輩がいます。
先日カクヨム甲子園で優秀賞を受賞した、『溺れる』を書いたのは高校一年生の秋頃でした。
そこで彼に伝えきれなかったことを、『ラブレター』に詰め込みました。
記念祭で販売した部誌、先輩の作品が載る最後の部誌に、私はこれを贈りました。
カクヨム甲子園が爆発の刹那的な熱だとするなら、U-24杯が、その熱の周辺の冷めた部分、後悔を、もう一度丁寧に温める大会だと思っています。
『溺れる』と『ラブレター』の二つが、両方の大会で最終選考に残ったことは、私がそれぞれを書いた経緯と重なり、感慨深いです。
クリスマスイブの昼休み、寒さとその他の色々なものに震えながら、先輩の教室に入りました。『溺れる』が優秀賞を受賞したことを、LINE上ではなく、直接伝えにいくためです。
私は、たくさんの言葉を知っているはずなのに、先輩の前だとその全てを奪われてしまいます。正直、何を話したのかよく覚えていないし、口に出したことの半分も理解可能な言葉ではなかったように思います。
それでも最後、私は確かに言いました。
「私、結局、ミステリーとしては、先輩においつけるような作品を書けたとは思ってなくって。でもずっと、ずっと、書き続けます。だから、いつか本屋さんで、私のことを見つけてください」
実際はもっと噛んでたし、声は常に聴きとりづらいまでに上ずっていたので、先輩は少し戸惑ったような表情を見せました。先輩の机の上には綺麗に食べ終わったカレーのお皿が置いてあります。先輩が食べられる食堂のメニューは、カレーとラーメンしかないな、そんなことをぐるぐる思い出します。先輩はもうすぐ卒業します。
「めっちゃ悔しかったんだよ俺、先に賞取られて」
悔しい。先輩、私に悔しいって言いましたか。
先輩の書く小説は、先輩が考えるトリックは本当に凄くて、先輩は本当にすごい。
私は、先輩に作家になってほしい。それがどれだけ自分勝手な希であるかも分かっています。でもなってほしいんです。
「本屋で、ってさ、将来作家になりたいって思ってたりする?」
私には茨の道しかありません。先輩は、食べ物の好き嫌いは激しすぎだけど、頭良いし、将来有望ってタイプだと思います。私はあなたにその将来を潰して、茨の道を突き進んでほしいって思ってるんです。
「はい。なりたいです」
「そしたらさ…」
一人ぼっちのクリスマス。街ではイルミネーションが輝いて、恋人たちが互いの熱を分け合っています。
そんな日に、結果が発表されました。
ここまで報われる気持ちは、そうそうないのではないかと、凍える指先を自分の息で温めながら私は思うのです。